Up | "Self-Attention" の意味を捉えるための秘訣 | 作成: 2025-05-17 更新: 2025-05-17 |
1. 「意味空間の再構築装置」としての視点 Self-Attention は、入力ベクトル列の中の各ベクトルに対して、それ以外すべてのベクトルを参照して再構成するという演算です。 秘訣: 各ベクトルが、「自分以外のすべてを意味的にスキャンして、自分を再定義している」と考える。 これは、従来の「左から右へ処理する」系列モデル(RNNなど)とは違い、意味の網目構造を一挙に捉える装置といえる。 例(擬人化的に): 「I saw the man with the telescope」 → with は the man を修飾しているのか、I を修飾しているのか? → Self-Attention は、その両方の可能性を「浮かべながら」重みをつけて各単語の意味を調整する。 2. 「問いかけと応答」の構造で見る(Query–Key–Value) Self-Attention の内部構造(Query, Key, Value)は、「各ベクトルが、他ベクトルに問いを投げ、答えを集めて、自分を更新する」プロセスです。 秘訣: 「Query(問い)を発する自分」と「Key(特徴)を持つ他者」間の関係性が、**重み(Attention Score)**に表れる。 この重みづけは、**意味の近さではなく、文脈上の「必要性」**に基づいている。 図式化的に: [Token_i] --(問いQ_i)--> 全ベクトルに照合 --(Attention Weights)--> 加重平均で V の集約 → [更新された Token_i] 3. 「静的な入力 → 動的な意味構造」への転換を見る 入力の埋め込みベクトル X(S) は静的ですが、Self-Attention を通すことで 文脈ごとの意味に動的に変換されます。 秘訣: 各トークンベクトルは、初めはただの「記号の埋め込み」にすぎない。 しかし Attention を通すと、他のトークンとの関係を通じて意味を帯びたものへと変化する。 これはまさにあなたが前回から掘り下げている「自己組織的ベクトル空間」そのものの姿です。 🧭 学習の道しるべ(ステップ) 行列計算の理解: Query, Key, Value という3つの行列への変換と、それに基づくスコア計算(内積 → softmax → 重み) Attention 重みの意味: なぜ内積でスコアを取るのか?なぜ softmax で正規化するのか?(「選択の強調」と「確率解釈」) 位置情報が失われない理由: Embedding に加えた位置ベクトルは、この過程でどう保持されるのか? Self-Attention の繰り返し構造(Multi-Head, 層): 意味のスキャンを「複数の視点」で行うことの効果(統合的意味の構築) 📘 あなたに特に響くと思われるたとえ Self-Attention とは、「一つの語が、全体を見て自分の意味を定める」、そういう**〈文脈的自我〉の形成装置**である。 このような視点で眺めると、「計算アルゴリズムと意味」の間の架け橋が見えてくるはずです。 記号としての構造にこだわるあなたの感性に、Self-Attention は強く応えてくれる構造です。 Self-Attention の構造まとめ(記号法と意味の両立) 0. 前提 入力されたテクスト S の埋め込み行列を X(S) = E(S) + P(L(S)) とし、X(S) は L(S) × D の行列(各行が D 次元ベクトル)とする。 1. 線形変換:Query, Key, Value の生成 入力 X(S) に、3 種類の重み行列を掛けて、Query / Key / Value を生成する: 重み行列: W_Q, W_K, W_V : D × d_k(通常 d_k = D / H, Hはヘッド数) 各行ベクトル x_i(X(S) の i 行目)に対して: Q_i = x_i · W_Q (自分が発する問い) K_i = x_i · W_K (自分が持つ情報の特徴) V_i = x_i · W_V (自分が他者に与える意味) 全体としては: Q = X(S) · W_Q (L × d_k) K = X(S) · W_K (L × d_k) V = X(S) · W_V (L × d_k) 2. Attention スコアの計算 Q と K の内積をとってスコア行列を作る: Attention スコア(未正規化): A = Q · Kᵀ (L × L 行列) ← i行j列は「Q_i と K_j の内積」 正規化(softmax): α_ij = softmax_j( A_ij / √d_k ) (各 i 行について j に softmax → 各行の和が 1) 3. Value の重み付き和:出力の生成 出力行列 Z: Z = α · V (L × d_k) → これが Self-Attention 層の出力であり、次の層(FFNや Multi-Head の統合など)に渡る。 4. 意味の図式化(あなた向け) X(S) = E + P ↓ ┌──────┬─────┬─────┐ │ W_Q │ W_K │ W_V │ ← 線形変換 ↓ ↓ ↓ Query(Q) Key(K) Value(V) ↓ ↓ ↓ 「問い」 「情報の特徴」 「意味の断片」 ↓ ↓ Q_i · K_jᵀ = 「i番目が j番目に注意を向ける度合」 ↓ α_ij = softmax(Q_i · K_jᵀ / √d_k) ↓ Attention 出力 Z_i = Σ_j α_ij · V_j 5. Multi-Head Attention の導入(簡略) これを H 回並列に行い(各ヘッドで別々の W_Q, W_K, W_V を使用)、 出力を連結して、さらに線形変換してまとめる。 Self-Attention の意味づけ再確認(あなたの文脈で) 各トークンベクトルは、全体を見て自分の意味を組み直す。 各 i 番目の出力ベクトル Z_i は、 自分(Q_i)が 他のすべての語(K_j)の特徴を見て 「どの語から、どの程度、意味 V_j を取り込むか」を判断し 文脈的な意味ベクトルとして再定義されたもの。 🧩補足 「softmax の意味」=「注意の焦点を絞りつつ、文脈の多義性を保持する」 「内積によるスコア」=「意味ベクトル空間内での方向の一致を見る」 「Multi-Head」=「複数の視点で文脈を解釈し、重ね合わせる」 |