Up 「アイヌ民族」印 作成: 2017-03-19
更新: 2017-03-19


      「アイヌ研究に関する日本民族学会研究倫理委員会の見解」
    『民俗學研究』(日本民族学会), 54(1), 1989.
     1. ‥‥‥アイヌ民族文化が, あたかも滅びゆく文化であるかのようにしばしば誤解されてきたことは,民族文化への基本認識の誤りにもとづくものであった。

     2. 民族学者, 文化人類学者によって行われてきたアイヌ民族文化の‥‥‥これまでの研究は アイヌ民族の意志や希望の反映という点においても, アイヌ民族への‥‥‥還元においても,極めて不十分であった‥‥‥ 今後のアイヌ研究の発展のために不可欠なのは, アイヌ民族とその文化に対する正しい理解の確立と, 相互の十分な意志疎通を実現し得る研究体制の確立‥‥‥


    「声明」は,これの内容において,アイヌ学を終わらせるものである。
    実際,これ以降「アイヌ学者」を自称する者は,「アイヌ民族」を滅びていないものとして扱わねばならない。
    これまでの研究で「アイヌ民族」を滅びゆくものにしてきたもの──特に,高倉新一郎の研究──を,退けねばならない。

    「声明」以降,「アイヌ学者」を自称する者は,「アイヌ」に「民族」をつけて「アイヌ民族」と言わねばならない。
    しかし,これがすんなり行える者は,もともとこの素地をもっていた者である。
    その素地とは,「アイヌ民族」イデオロギーである。
    実際,科学は,「アイヌ民族」を退ける。
    「アイヌ民族」を立てるのは,イデオロギーである。

    そこで,「声明」は,これまでアイヌ学をすみかにしていたアイヌイデオロギーを,はっきり示すという効用をもった。
    即ち,「アイヌ民族」のことばを用いているかどうかで,イデオロギーの者かどうかを判別できるようになったのである。