Up 「アイヌの代表」: 要旨 作成: 2016-12-11
更新: 2016-12-11


     アイヌ協会理事長「国連総会記念演説」(1992-12-10 )  
     
    各国の政府代表部の皆さん、そして、兄弟姉妹である先住民族の代表の皆さんにアイヌ民族を代表して、心からご挨拶を申し上げます。
    ‥‥‥ 第二次世界大戦が終わると、日本は民主国家に生まれ変わりましたが、同化主義政策はそのまま継続され、ひどい差別や経済格差は依然として残っています。
    私たちアイヌ民族は、1988年以来、民族の尊厳と民族の権利を最低限保障する法律の制定を政府に求めていますが、私たちの権利を先住民族の権利と考えてこなかった日本では、極めて不幸なことに、私たちのこうした状況についてさえ政府は積極的に検討しようとしないのです。
    ‥‥‥
    日本のような同化主義の強い産業社会に暮らす先住民族として、アイヌ民族は、さまざまな民族根絶政策(エスノサイド)に対して、国連が先住民族の権利を保障する国際基準を早急に設定するよう要請いたします。
    また、先住民族の権利を考慮する伝統が弱いアジア地域の先住民族として、アイヌ民族は、国連が先住民族の権利状況を監視する国際機関を一日も早く確立し、その運営のために各国が積極的な財政措置を講じるよう要請いたします。


    アイヌ協会理事長が,国連に行って「アイヌ民族を代表して」を言う。
    「アイヌ民族の代表」を自任しているわけである。

    ○○を研究分野とするある学会の会長が,「○○学者を代表して」と演説したら,「誰に断っておまえは代表なんだ!」になる。
    ○○学者で,その学会に属していない者がいるからである。
    一方,アイヌ協会だと,「誰に断っておまえは代表なんだ!」にはならない。
    アイヌ系統者で,アイヌ協会員にならない者がいるのにである。
    なにが違うのか?

    違うのは,「代表」の概念である。
    学会とアイヌ協会では,「代表」の概念が違うのである。
    実際,アイヌ協会の「代表」の概念は,左翼イデオロギー譲りである。


    左翼イデオロギーの者は,「人民の代表」を自任する。
    少人数の集まりでも,「人民の代表」である。
    どうしてこんな思いが持てるのか?
    前衛主義に立つからである。

    前衛主義は,民主主義がこれの対立概念になる。
    学会の「代表」の概念は,民主主義の「代表」の概念である。
    一方,アイヌ協会の「代表」の概念は,前衛主義の「代表」の概念である。

    前衛主義と民主主義は,「皆」の意味づけの仕方が違う。
    民主主義では,皆は,<代表を選ぶ者>である。
    代表に選ばれた者が,代表行為をやれる。
    前衛主義では,皆は,<自分が導かねばならない者>である。
    自分は,いつでも代表行為をやれる。


    アイヌ協会執行部に入るとは,前衛主義に即くということである。
    アイヌ協会とは,そういうところである。
    アイヌ協会執行部の思考回路は,左翼イデオロギーの前衛主義である。
    この前衛主義が,国連に出て「アイヌ民族を代表して」を言うことをさせる。

    ちなみに,「アイヌ遺骨返還」もこの類である。
    これを運動する者たちは,「祖先・同胞の代表」を自任する。
    民主主義だと「祖先・同胞がいつおまえを代表にしたんだ!」になる類であるが,思考回路が前衛主義だから,いつでも好きなときに「祖先・同胞の代表」になれるわけである。
    そして,訴えられる方も,根っこが前衛主義なので,彼らをすんなり代表として認めてしまう。