Up 「アイヌの系統」の定義 作成: 2016-11-26
更新: 2016-11-26


    ひとは,「アイヌの系統」のことばを聞かされると,これをわかったつもりになる。
    しかし,考え出すとわからなくなる。

    「アイヌの系統」の定義を考えてみよう。
    この定義は,つぎの形で考えることになる:
      <「アイヌの系統」に属する・属さないを決める規準 (criteria/rule)>

    定義は,一見,ぞうさないように思える。
    即ち,つぎが定義として成立すると思える:
      先祖にアイヌがいる者を,アイヌの系統の者と呼ぶ。

    しかし,この定義は使えない──即ち,定義になっていない。
    「先祖溯行」の方式が,定まっていないのである。
    「先祖溯行」の方式として,いろいろ決めねばならないことがある。

    「アイヌの系統」が問題になる場面は,アイヌ協会のアイヌ認定である。
    専らそこだけである。
    よって,「先祖溯行」の方式は,アイヌ協会のアイヌ認定の都合に適うように,決めてやらねばならない。


    アイヌ見聞記には,アイヌが和人の子を養子にする話が出てくる。
    また,和人がアイヌと結婚しアイヌとして生きていくというのも,あり得たと考えねばならない。
    そこで,「アイヌになった和人」は「先祖」としてありである。
    実際,「アイヌ」の意味は「アイヌとして生きた者」であるから,「アイヌになった和人」はもとよりアイヌである。

    問題になるのは,つぎである:
      「和人になったアイヌ」 (アイヌが和人の世界に棲む者になる)
    《母・父両方の家系を溯る》を一段一段進めていって「和人になったアイヌ」に到達したとき,これを「先祖」としてありにするかどうかが問題になる。
    アイヌ協会のアイヌ認定の都合を考えてやるときは,「和人になったアイヌ」も「先祖」としてありにしなければならない。
    「アイヌ」と認定した者のなかには,東京で生活していているような者もいるからである。

    しかし,「和人になったアイヌ」を「先祖」としてありにすることは,「系統」の定義を無効にしてしまうのと同じである。
    あるアイヌが百年前外地に移住し,その子孫も代々外地に棲んできた。
    いまこの子孫の一人である者は,アイヌの系統の者である。
    この者の子孫も,ずっとアイヌの系統の者である。

    これが「系統」の定義を無効であるというのは,「系統」のことばのこのような使用を許せば,何でもありになるからである。
    ヒトの母系は,アフリカのイブに溯る。
    ヒトは,アフリカのイブの地から地球上に拡散した。
    その拡散過程の任意の<時代・地域>Aをとらえて,「自分はAの系統だ」と唱えることができるわけである。
    これに対するリアクションの形は,ただ一つである:
        だからなんだ