Up <アイヌ事業法人> : 要旨 作成: 2019-10-04
更新: 2019-10-04


    運動 campaign は,決まって「こんなはずではなかった」になる。
    系ダイナミクスは,個を超越するからである。
    その「こんなはずではなかった」は,《管理システムに回収される》である。

    アイヌ法は,「アイヌ事業交付金の根拠法」がこれの意味になる。
    そして "アイヌ" は, 「アイヌ事業が立てるアイヌ」になる。
    アイヌ立法には,"アイヌ" の規格化が含意されるわけである。

      小川隆吉 (2015), p.137
     「アイヌ文化振興法」ができる前の年の総会で、野村義一さんが理事長からおろされた。 野村さんがアイヌ新法を実現する先頭に立っていたんだ。 あの人は、新しいアイヌ法の下でも理事長を続けたいという気持ちがあったと思うよ。 なのに理事会の投票をやったら笹村に決まってしまったんだ。
    同時に俺も理事から外された。
    あれはクーデターのようなものだった。
    ウタリ協会の転換点だったと思う。
    うしろで政治家が動いていたのでないか。‥‥‥
    野村さんのあとウタリ協会理事長になった笹村は、「文化振興法」がウタリ協会のアイヌ新法案と全然違うのに一言も文句を言わないんだから。

       同上, pp.185,186
     北大から開示のあった年の10月に「アイヌ政策のありかたに関する有識者懇談会」が、北海道の現地でヒアリングをした。 東京から佐藤幸治先生などの委員、道内ではウタリ協会理事長の加藤忠、北大の常本教授やら高橋はるみ知事とかが参加することになっていた。
    札幌支部のアイヌの何人かに出席の案内がきていて早苗もその一人だった。 「あんたには来てないの」と言うんだよ。 俺はそのことを前日になって早苗から聞いたんだ。 急いで阿部ユポに電話して「明日はなんかがあるようだけど私には連絡がないね」と聞いた。 阿部は「来てもいいよ。ただし傍聴だよ」と言った。 つまり発言権はないということ。
    次の日、会場のピリカコタンに行った。 その時、北大から開示された遺骨関係の人骨台帳やら、アメリカ・カナダ・オーストラリアでは総理が替わるたびに先住民族に謝罪しているのを書いた新聞の切り抜きをみんなの分を持って行った。 記事のうち首相が謝罪している写真がついたものだったが、新聞の名前がなかった。 それで急いで札幌市中央図書館に行って──パス、地下鉄と電車乗り継いで──行って探してもらった。 随分待って係のお姉ちゃんが「ありましたよ!」って階段から降りてきた。 『赤旗』の記事だった。 よく探してくれたと思ったよ。
     ヒアリングの会場には、有識者がズラッと並んでいた。 これと向き合ってウタリ協会札幌支部の連中が20人ばかり並んでいた。 会場に入っても俺の席はないんだ。 それでそこに来ていた秋山審議官のところに行き、名刺を出して「私の特別発言を認めてください」と言った。 秋山氏は「いいですよ、ただし最後ですよ」と簡単に認めてくれた。 それから誰かが出してくれた椅子に座った。
     会議が始まると委員のほうから色々質問が出されたんだが、答える方はどれも肝心なことを外しているんだ。 ぼやっとしたことは話しても肝心なことは誰も、なんにも言わない。
    最後に俺の番がきたので用意していった資料を配って色々話した。 特に遺骨の問題についていっぱい話した。 俺はその時頑張ったんだ。 最大にエネルギーをだして頑張ったんだ。 早苗が後ろに来て「あんたもう止めなさい」と言うんだ。 そのくらいしゃべった。 ああいう場では、肝心なことに触れる話はみんな避けてるんでないか。
     それより秋山氏は許可したのに、阿部は話すなという態度だ。 俺はアイヌによって差別されたことが悔しいんだ。


    アイヌ法の進化は,"アイヌ" 規格の進化である。
    今日は,「アイヌ政策推進交付金事業計画」が "アイヌ" を規定する。

    「アイヌ政策推進交付金事業」を行う地方自治体は,この事業において<アイヌ事業法人>になる。
    その地域の "アイヌ" は,この法人の員として働く。
    地域の「アイヌ協議会」の類は,中間管理職の役回りになる。 ── "アイヌ" の働きを管理し,成果を回収して上にあげる。


    事業の大枠は,北海道観光振興の中に位置づけられる「アイヌ観光振興」である。
    この事業は,つぎの二つで成る:
    1. アイヌ観光インフラの整備
    2. "アイヌ"人材育成

    "アイヌ" は,<務め>になる。
    その務めは, 《「アイヌ政策推進交付金事業計画」に記された「成果目標」が達成されるよう協働する》である。
    これには,《この働きを果たせる者になるための自己研鑽をする》が含まれてくる。

    「成果目標」の例として,2019-10-01 内閣府承認の「平取町アイヌ総合施策推進事業」のものを引いておく:
      (1) 文化振興事業
        アイヌ文化施設入館者数
      (現状値)  令和元年度65,000人/年間
      (最終目標) 令和5年度102,000人/年間
        平取町アイヌ関係WEB閲覧数
      (現状値)  令和元年度40,000アクセス/年間
      (最終目標) 令和5年度62,000アクセス/年間
        生活館利用者数
      (現状値)  令和元年度20,000人/年間
      (最終目標) 令和5年度40,000人/年間
        伝統的家屋 (チセ) 活用件数
      (現状値)  令和元年度50件/年間
      (最終目標) 令和5年度70件/年間
        体験交流事業の参加人数
      (現状値)  令和元年度1,600人/年間
      (最終目標) 令和5年度2,000人/年間

      (2) 地域・産業振興事業
        アイヌラッピングバス利用者数
      (現状値)  令和元年度1,500人/年間
      (最終目標) 令和5年度3,600人/年間

      (3) コミュニティ活動支援事業
        平取町学習塾利用生徒数
      (現状値)  令和元年度80人/年間
      (最終目標) 令和5年度110人/年間

      いずれも令和5年度に目標を達成する見込みである。

    成果は,"アイヌ" がいかに魅力的に自分たちを現すことができるかにかかっている。
    "アイヌ" の責任は重大というわけである。