Up "アイヌ" の進化 : 要旨 作成: 2019-10-17
更新: 2019-10-17


    「アイヌ利権」を理解するためには,"アイヌ" ──アイヌ終焉後にあって「わたしはアイヌ」をデモンストレーションする者──を知らねばならない。
    「アイヌ利権」は "アイヌ" 進化のいまの到達点として理解されるものだからである。

    "アイヌ" 進化については本論考の各所で論じていて,改めて述べるのは「くどい」の観がある。
    しかし本編を self-contained にする意味から,ここでも簡単に押さえておく。


    アイヌとは,アイヌの生活を生きた者のことである。
    和人も,アイヌの生活をする者になれば,アイヌである。
    特に,アイヌの生活の終焉はアイヌの終焉である。

    明治維新で,アイヌの生活は終焉する。
    土地には所有者がつくことになり,アイヌは狩猟採集を営めなくなる。
    運上屋が廃止になり,運上屋に雇われるというアイヌの生業も無くなる。

    アイヌの生活をやめさせられることになった者と彼らの後世代は,和人体制での自分のあり方を模索する者になる。
    そして彼らの中から,同族のあり方をキャンペーンしようとする者が現れる。
    彼らはそのキャンペーンを以て「アイヌ」を自称する格好になる。
    アイヌ終焉後のこの「アイヌ」自称者を,"アイヌ" と謂う。


    "アイヌ" は,時代の流れの中で進化してきた。
    特徴的なタイプをつぎのように定める:
      • 同化"アイヌ"
      • 文学"アイヌ"
      • 観光"アイヌ"
      • 政治"アイヌ"
      • 利権"アイヌ"
      • 法人"アイヌ"
    これらの語は,「誰某(だれそれ)は〇〇"アイヌ"」というふうに使うものではない。
    「誰某はこの局面において〇〇"アイヌ"」というふうに使う。

      個の<生きる>は多面的であり,一生は進化史である。


    同化"アイヌ",文学"アイヌ" は,アイヌ系統者の全国拡散により,存在意義を終え消えていった。

    昭和の戦後,「被抑圧者」の存在を立てて体制を弾劾する政治運動が盛んになる。
    その「被抑圧者」のうちに「アイヌ」が置かれる。
    そして,"アイヌ" 権益獲得の運動となる。
    この運動で「アイヌ」を行動した "アイヌ" を,政治"アイヌ" と謂う。


    "アイヌ" 権益の獲得が成る形は,「アイヌ法」である。
    「アイヌ法」を根拠として,"アイヌ" への手当金交付が始まる。

    交付金は,金の循環の始まりである。
    金の循環が始まるところには,この循環に(あずか)ろうとする者が集まる。
    こうして,「アイヌ利権」が形成されていく。
    特に,"アイヌ" の中に利権"アイヌ" が現れる。


    「手当」のタイプの "アイヌ" の特別扱いは,理が立たなくなる。
    アイヌであることが理由で困窮が強いられている」は,今日,"アイヌ" も言い出せない名分である。
    政治"アイヌ" は,運動の題目を失い,「アイヌ利権」に取り込まれていく。
    これは政治"アイヌ" が反政権の政治勢力から離れることになるので,政権側もこれのうまい誘導を計るようになる。

    この流れに置いていかれる格好で,体制と対決するイデオロギーを堅持する政治"アイヌ" がいる。
    彼らは,"アイヌ" シーンから消えていくことになる。


    「アイヌ利権」は,「北海道観光」に回収されるものに変わる。
    「アイヌ利権」の金循環の開始になる交付金は,査定を通った「アイヌ振興事業計画書」に下される。
    事業主体は法人格のものになる。
    "アイヌ" はこの法人の員として,「北海道観光」の「アイヌ」の役を機能的に務める者になる。
    この "アイヌ" を,法人"アイヌ" と謂う

    こうして "アイヌ" は,法人"アイヌ" と,これに組織されない観光 "アイヌ" (?) の,二種になる。