Up 「アイヌ法」: 要旨 作成: 2016-12-09
更新: 2016-12-09


    幕末,そして明治の時代になって,アイヌの生活はつぎの二つの制約により成り立たなくなった:
     ・外的制約: 和人の入植
     ・内的制約: 《アニミズム社会保護区の住民として生かされる》が可能であったとして,それはアイヌにとっていいことか?

    明治政府は,このアイヌをどうしたものかと考える。
    そして,アイヌ対策を,「アイヌを農業で自立させる」にする。

    「アイヌを農業で自立させる」を進めるには,法が要る。
    こうしてできたのが,『北海道旧土人保護法』(1899) である。
    『北海道旧土人保護法』の意味は,つぎのものである:
      「アイヌを農業で自立させるための法」
    そしてつぎが,これの内容である:
      アイヌに私有地を定める
       ──土地私有制を,アイヌにも適用する

    土地私有制は,商品経済の含蓄 (implication, 必要条件) である。
    『北海道旧土人保護法』には,つぎの含蓄がある:
      「アイヌを商品経済に組み入れる」


    「アイヌを農業で自立させる」は,うまくいかない。
    アイヌの思考回路は,アニミズムである。
    土地私有・土地運用は,何から何まで新しいことばかりである。
    こうして,悪い土地をもたされてしまうとか,土地の権利を失効するとか,土地を騙されてとられてしまうといったことが,いろいろ起こる。
    中には,成功したアイヌもいるが,それは少数派ということになる。
    実際,成功したアイヌは,早くから和人社会に入り和人文化に「啓蒙」されたアイヌである。

    戦後になって,新展開が起こる。
    このとき,アイヌ法の対象は,アイヌから "アイヌ" に変わっている。
    そしてこの世代から,「「アイヌを農業で自立させる」はだめだ!」が,声になる。

    「アイヌを農業で自立させる」に替わるものは?
    つぎのものである:
      「"アイヌ" を生活保護する」
    そして,これが政治運動になる。
    政治運動の形は,『北海道旧土人保護法』を廃止し,新法をつくるである。

    『北海道旧土人保護法』の廃止については,この法の「保護法」的内容を,自分の利とする者と,自分には無縁とする者の,2タイプが現れる。
    そして一時期,二つの立場が対立する。
    そして最後に,『北海道旧土人保護法』の廃止が,運動になる。

    そして新法を得る。
    『アイヌ文化振興法』(1997) である。
    この法の意味は,つぎのものである:
      「"アイヌ" を生活保護するための法」


    以上のように,物事はロジカルに進行している──系の遷移は論理的である。
    しかし,以上の経緯を論理的に構成することができる者は,稀である。
    ひとの思考回路は,所詮アニミズムである。
    「アイヌ学者」を見ると,これがよくわかる。

    「アイヌ学者」に言わせると,『北海道旧土人保護法』は「差別法」である。
    「差別法」と定める彼らのロジックは,「「旧土人」は差別語!」である。
    『アイヌ文化振興法』は,彼らにとっては,文字通り「文化振興法」である。
    「生活保護」と露骨に言わないためのことばが「文化振興」だということが,彼らにはわからない。

    そして,一般者は,アイヌ・"アイヌ" について無関心・無知の者であるから,「アイヌ学者」の言を鵜呑みにする。


    ところで,「アイヌ法」は,「"アイヌ" を生活保護するための法」で終わりになるのではない。
    「アイヌ法」には,まだ先がある。
    それは,『先住民族法』である。

    この法の意味は,つぎのものである:
      「"アイヌ" に自治をさせるための法」
    そしてこれの中身は,つぎのものである:
    1. "アイヌ"団体に,「自治」名目の資金供与 (一時と年度毎)
    2. "アイヌ"団体が,供与された資金を自由に運用