Up 第71回衆議院予算委第三分科会での質疑 (1973) 作成: 2017-03-07
更新: 2017-03-07


      第71回 衆議院 予算委員会第三分科会 昭和48年3月5日 第3号,1973.
    http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/071/0388/07103050388003.pdf
    ○倉成主査
     次に、岡田春夫君。
    ○岡田(春)分科員
     きょうはアイヌ民族の問題で若干御意見を伺いたいのですが,わずか三十分ですから、ひとつ簡明明快な御答弁をいただいて、長い点は、できるだけ簡単明瞭に御答弁をいただきたいと思います。
     まず第一点は、昨年度の予算で厚生省と北海道庁が両方調査費を出しまして、北海道ウ夕リ実態調査というのを行なったんですが、それによると、大体百十五地境における調査を行ないまして、全体の調査ではなかったんですが,アイヌ民族の動向が大体出てきたようでございます。
    人口も、推定入国ではありますが、一万八千余ということであり、また経済状態の問題については、日本の一般の経済水準より非常に悪い状態になっておる。
    保護世帯など低所得階層が大体三○・九%,三割はほんとうに最低のところで生活をしなければならない。
    しかも,そういう経済的な事情によって,子供たちが就職することも非常に困難だという状態になっております。
    これなども数字が出ておりますが,就学が非常に困難であり,また就臓についても差別が行なわれている関係でなかなか安定した職場につくことができない。
    こういう状態が今日のアイヌの民族の現状でございます。
     こういう状態について、まず第一点として伺いたいのは,政府は,アイヌ民族についてほんとうに積極的な政策をおとりになっているつもりなのかどうか。
    それからまた、今日厚生省がアイヌ民族の問題をやっておりますけれども、よれは一般の低所得階層に対する社会福祉政策の一部として行なっているのか、あるいはまたアイヌ民族それ自体に特別な政策を行なっているのか、どういう観点でこれを行なっているのかという概論的な話でございますので,厚生大臣から御答弁をいただきたいと思います。
    ○齋藤国務大臣
     北海道におきますウタリの実態調査につきましては,いま先生お述べになりましたように、所得の上からいいましても,非課税の者が三○・九%,それから職業上の状況も思うようになく,学伎の進学等もそのほかの地域のものとだいぶ劣っておる,生活保謹の関係も保護率が非常に高い、お述べになりましたとおりでございます。
    そこで,このウタリ、アイヌの方々に対する私どもの基本的な態度は、アイヌは日本国民の中の別な民族である、こういったふうな考え方は一切考えておりません。
    あくまでも法のもとにおいて平等な日本国民である、こういう基本的な考えに立っておりますが,このアイヌの方々が、いま申し上げましたように,所得の面においても,また職業の面においても、進学の面においても,生活保護の面においても,その生活環境が非常に劣っている。
    これを何とか日本国民並みに高めていかなければならない、福祉を向上さしてあげなければならない,こういう観点で今日まで努力をしたしておるつもりでございます。
    予算的な面にはあるいはまだ十分でない点はあると思いますが、その生活を向上せしめるという考え方に立って努力をいたしておるような次第でございます。
    ○岡田(春)分科員
     先ほど御答弁の中で、日本人の中で別な扱いをしているわけではない、そういう意味では差別ではない、こういう意味でお話しになったんだと思うのですが,これについてはあとでもう少し具体的に伺いたいと思います。
     これは日本人ではあるけれども、現実の問題として人種が違うアイヌ系日本人,こういうべきものであると思うので、こういう点はあとで伺いますが、もう少し進めてまいりますと、いま一般の低所得階層と同じような政策でやっておるということなんですが,そのことはかえって逆に差別というような問題を実は進めていくことになるということは,低所得階層に対して十分な社会保障政策が行なわれているような予算の状態であるならば、これは十分に措置ができるわけですけれども、今日は予算が非常に少ない中で一般のほうの扱いにしていくということになりますと、アイヌ民族に対する社会保障的な政策でもきわめて不十分な結果になっている。
    これは現実として見のがせない事実だと思いますが,予算も十分とは思えないかもしれないがという答弁でございましたけれども,今日の状態はきわめて苦しい状態である。
    一般の人の扱いとしても、最も苦しい状態におとしいれられているという状態ならば、その人たちに特別のそういう社会保障の政策が行なわれるべきではないかというのが私のむしろ考え方なんですが、その点もう一度伺っておきたいと思しいます。
    ○齋藤国務大臣
    法律的な観点から申しますれば,アイヌの方々も平等な日本国民である。
    これは法的には私はそう貫いていくべきものであると信じております。
    しかし,現実的には,そういう生活環境にある民族と言っていいのかどうか別といたしまして、そういう方々がおられる、これも事実でございます。
    そこで、一般的な社会保障というワクの中で考えるにいたしましても、現実的なそういう方々がおる、これはやっぱり着目していかなければならないというふうに私ども考えて、そうした方々の福祉の増進ということに努力をしていかなければならぬであろう、かように考えておる次第でございます。
    ○岡田(春)分科員
     これはあとでもう少し進めてまいりますが,いま法律的には全く同じだ,こういうことですが、社会福祉の面において法律的には全く平等である、しかし、それ以外に法律的にも必ずしも同じということが言えない点があるわけです。
    これは北海道旧士人保護法という法律があるわけです。
    しかも,この問題について、昨年の三月十六日の社会労働委員会で島本君からいろいろ質問をいたしまして、ここにおられる加藤社会局長も、これで答弁をしておられる。
    速記録を私持っておるのですが,この法律を存置すべきであるか存置すべきでないかということについていろいろ議論をそのときされておる。
    そのときに,当時の厚生大臣は、同じように斎藤きんですが,斎藤昇さんで、加藤社会局長らの答弁によると,特に加藤局長は,このように言っております。
    「しかしこの法律をつくった趨旨は,要するにウタリの人たちを守ろうという趣旨だったと思いますので,そういう意味ではある程度メリットが残っているんじゃないかという感じがいたします。」 メリットがあるんだという前提に立ってこの法律の存置を主張する立場に厚生省がなっているわけです。
     そこで、伺いたいのは,それではこの法律を存置したほうがメリットがあるということならば、この法律は実際に動いているものなのかどうなのか。
    それから、私の知っている限りでは、第二条は北海道知事の許可事項ですけれども,この点は今日拘束力があるという意味で動いているんだが,それ以外の点の条章はなぜ動かさないのか,こういう点を伺いたいと思います。
    ○加麗(威)政府委員
     北海道同士人保護法につきましては、確かに先生御指摘のような質疑応答があったわけでございますが,この条文につきましては、かつては教育の問題とかいろいろ特権的なこと,ある程度保護するという立場からの条文がございましたけれども、それが削除されまして、メリットといいますか、そういう点では,現在は,先生いま御指摘になりましたように、ウタリの持っている土地というものを北海道知事の承認がないと処分できない。
    これはこうかつなる内地人にせっかくの土地をだまし取られないようにという題旨でできている条文でございますが、そういう意味ではメリットがあるということだと思います。
    その他の条文、たとえば福祉施設とかそういう点については残った条文がございますけれども,これは現実にやっております補助は、この条文というよりもむしろ不良環境地区の整備の補助の一環としてやっているということでございますので,そういう意味では、必ずしもこの条文によっているということではないわけでごさいます。
     ただ、問題は、私どもはこの条文につきましては、やはり北海道庁なりあるいはウタリの方々の意見に従ってその処置をいたしたい。
    したがって、ウタリの方々が、もうこういう法律は廃止してくれ,それについて道庁も異論がないということであれば、われわれとしてもこの法律を廃止するにもちろんやぶさかでないわけでございますが,先生御承知のように,これについてはウタリの中でも二つの意見があるというぐあいに私ども承っております。
    そういう点について,この存廃について統一した見解が関係者の間でできれば、私どもはその意見に沿って処置をしたいというように考えております。
    ○岡田(春)分科員
     時間もありませんので進めますが,この法律の第一条でアイヌ民族に対して給与地が与えられることになっておる。
    今日までにこれがどれくらいあるのか。
    それからその土地台帳というのが整備されているかどうか。
    それからもう一つは、第八条で旧土人共有財産というのが今日もあるわけです。
    これがどのくらいになっているのか。
    その場合の簿帳類も整備されているのか。
    しかも,共有財産からの収益というのがあることになっているが、その収益はどういうようになっているのか,これらの具体的な点をお伺いしたいと思います。
    ○加轟(威)政府委員
     第一条による土地の無償交付でございますが、これは昭和十年まで実際に行なわれていたようでございまして,その当時七千六百町歩という記録が残ってございますが、その後漸次整理されまして,現在では、最近の私のほうで把置しておりますのは、三千六百七十五町歩というのが北海道‥‥‥ (岡田(春)分科員「それは何年現在ですか」と呼ぶ) これは最近でございますから,私どものほうで北海道庁に問い合わせてとった数字でございます。
    ○岡田(春)分科員
     じゃ,去年度ですね。
    ○加藤(厩)政府委員
     たぶんそうでございます。
    それから,共有財産につきましては現金が三十六万円,これは定期預金というかっこうでございます。
    その他、宅地、田畑が若干あるようでございますが、これははっきりした数字はわからないということでございます。
    一応私どものほうで把握しておりますのはそんな数字でございます。
    ○岡田(春)分科員
     簿帳頬はどうなっていますか。
    ○加麗(威)政府委員
     その点については,いま申し上げた数字が北海道庁でこちらに連絡してまいった数字でございますので、ある程度整備されていると思いますが,どの程度整備されているのかどうかについては、まだ私ともは確かめておりません。
    ○岡田(春)分科員
     これは政府も含めて北海道庁もけしからぬことだと思うのですが、簿帳が整備されていないのですよ。
    簿帳が整備されておらないとしうことを私がはっきり申し上げるのは,ここにもありますが、行政管理庁の事務次官の昭和三十九年の六月三十日の通達においてもそういうことがはっきりしておる。
    「道の土地台帳の整備が悪く、殆どその実態を把握していない」こう言っている。
    ほんとうにアイヌ民族のことを考えていると言いながら、簿帳類が整備されておらないという状態では、一生懸命やっているとお話しになりますけれども,これでは話にならないと思うのですが,こういう点はもう少し簿帳類を含めて、きょうはひとつあなたのほうにお願いしておきますけれども、お調べをいただいてあとで資料としてお出しをいただきたいと思いますが,大臣、いかがですか。
    ○齋藤国務大臣
     お話しのとおりの資料はできるだけ早く調査いたしまして,提出いたします。
    ○岡田{春)分科員
     それから、行政管理庁のこの通達に基づいて北海道旧土人保護法というものを行政管理庁としては廃止しろ、こういう態度だったのですね。
    これに対して、どうしても残してくれというのが厚生省と北海道庁の態度だ。
    そこで,その結果として今度は七条を改めますということになって七条を直したわけです

    七条を直してこういうことになっているわけです。
    これは大臣,ぜひ聞いておいていただきたいのですが、 「北海道旧土人ノ保護ノ為必要アルトキハ之ニ関スル施設ヲ為シ又ハ施設ヲ為ス者に対シ補助ヲ為スコトヲ得」 それからその次の八条が重要なんですが,八条で 「前条ニ要スル費用ハ北海道旧土人共有財産ノ収益」 ──だから、これで帳簿が非常に必要になるわけです。
    収益をもってこれに充てる。
    しかもそのあとが重要なんですが,もしこれが不足のときには国庫よりこれを支出するという規定になっている。
    足りないときには出さなければならないという義務関係ですね。
    こういうことまで法文上明らかになっているわけです。
    こういうことになっているならば、先ほどのお話をるる伺っておりますと、大臣も局長も必ずしもこの法律を動かしているわけではない、こういうお話ですが、それほどアイヌ民族が困った状態にあるならば、この法律に基づいて国庫の支出をしなければならないということになっているのですから,なぜ予算をお取りにならないのか。
    しかもこれだけメリットがあるといって残しているのですから,メリットがあるといって残しているなら,これはこの法律を使って予算を取るということは当黙考えるべき問題であるし,アイヌ民族としても・保護のために国庫から支出させるということははっきりしているわけですから、当然の要求であると言わなければならない。
    なぜこれを法律七条,八条をお使いになって要求されないのか。
    こういう点について今日政府のとっている態度というのは、何かアイヌ民族にやっているような形をとりながら,実際にはこういう法律があるにもかかわらず、具体的に法的基礎の上に立っての予算の具体化というのが行なわれておらないのはきわめて遺憾ですが,大臣,どのようにこれをお考えになりますか。
    ○加藤(威)政府委員
     確かに八条にそういう規定がございますが、北海道旧土人の共有財産の収益をもって充てる,足らないときは国庫から出す、こういうことでございますが,共有財産につきましては、先ほど申し上げましたように,不動産についてははっきりわかりませんけれども,動産については三十六万円の定期預金ということでございますので、こういったものの果実というようなものはとるに足らない
    それから共有財産としての宅地,田畑というものもおそらくたいしたものはないのであろうというぐあいに考えるわけでございます。
    したがって、要するに、この条文は,とにかくそういう共有財産から取れるものは取れ、そのかわり国もそれについて不足のものは国が出せ。
    それから七条に「旧土人ノ保護ノ為必要アルトキハ之ニ関スル施設ヲ為シ又ハ施設ヲ為ス者ニ対シ補助ヲ為スコトヲ得」とありますが,これはどの程度の施設を使うかということ、これは「必要アルトキハ」という非常にぱく然たる書き方でございますので、これによって,七条、八条によって国が一体どれだけのものを出したらいいかということは必ずしもはっきりしてない、そういう規定だろうと思います。
    そういうことで、私どもといたしましては、一応これと離れまして、そのかわり共有財産からの果実を云々するということももちろんやらない
    そのかわり、国も二分の一の補助でございますが,必要な施設、これは医療環境等の整備も一環でございますけれども、主たる地区に重点を置いて施設整備をやっている,それについて国が二分の一の補助をしている、こういう状態でございます。
    ○岡田(春)分科員
     時聞がないのであれなんですが、たとえば不動産の問題なんかで,私の調べたところでは、三十六万円以外に,宅地が七千九百坪、それから田畑が十町歩以上あるということなどもあるのです。
    まあ,あなたのほうでもうちょっと調べてもらわないと──しかもこれが、私,調べた限りでは,帳簿がはっきりしないのです。
    こんな無責任なことではやっぱり困るのですね。
    これは歴史的ないろいろな経過が共有財産問題についてあります。
    しかしきょうは時間かないから私は言いませんけれども、しかも,先ほどあなたおっしゃいましたけれども,もし不足する場合、金額が幾らであろうと,収益というもので不足した場合には国庫から支出する。
    明文上明確になっているのですから,金額の問題はともあれ,この規定をお使いになって出すのがあたりまえじゃないか。
    それほど困っているのなら,これをお使いになるのがあたりまえじゃないかと私は思うのです。
     そこで、私は、北海道旧士人保護法という法律は賛成ではないのです。
    これは旧土人などという名称でもわかるように,劣等民族として扱うとしう、差別、ベっ視の思想が──この法律は明治三十二年につくられているのですから,七十五年前の日本の帝国主義的な支配政策のあらわれです。
    そういう劣等民族を差別、ベっ視するという考え方に立って保護をしてやる。
    保護をしてやるというのは,同化,支配するということなんだ。
    こういう点では、こういう法律というものはやはりなくしてしまったほうがいいと思うのです。
    しかし、私は,その保護でさえ,いまのお話を伺っていると、保護のための予算は組まれておらないということが局長の答弁で明らかになったわけです。
    そうすると、明治時代よりもまだ、今日のアイヌ民族に対する政策というのはその当時よりもまだおくれた政策というか,もっと,保護さえもやらないというような政策を行なっているというように見ざるを得ないわけですね。
    そういうことを言うと、あなたのほうでは,いや,新しい憲法では人種その他に差別を設けないということだから、これは決して差別政策でありません,こういうようにお答えになると思うのですが、実態においてはそうなっているわけですね。
     そこで、私はもう一つ、局長の話は、アイヌ民族の中でも,土人保護法が賛成か反対かで意見が分かれている。
    これは分かれている。
    しかし、分かれている根本というのは、もっと根深いところにあるのです。
    結局は,この法律がなくなった場合に、もっとひどい,いわゆるアイヌ民族を消滅してしまうような、問題にしないようなそういう投げやりの政策が行なわれるんじゃないか。
    まあ、ないよりはましなんじゃないかということなんですね。
    一方においては,私、先ほど言ったように、一つの原則上の立場に立って,こんなものはなくしちまえ、差別を明らかにするのはなくしちまえという意見がある。
    問題は,もっといい法律がここでできれば,アイヌ民族に対立が出てくるはずはないのです。
    問題はその点なんですよね。

     だから,問題は、私は大臣に伺いたいのは、アイヌ民族の政策というものをひとつ抜本的にここで再検討する中でこの問題を考えていく,そういうことがいま必要な段階だと思うのですが、この点は、厚生大臣はこの関係もたいへん専門的にも社会保障政策をやっておられると思うので、ひとつこういう点を抜本的に変えるようなことをお考えになるかどうか,この点をお伺いいたします。
    ○齋藤国務大臣
     このアイヌの問題は、実は私も、この北海道旧土人保護法というものがあったわけでございますが,ほとんど死文化したような事情にある,これはお述べになりましたとおりだと恩います。
     そこで,死文化したような法律でありますが、せめてこういう、この程度の法律がなければ,政府もあまり福祉を熱心にやらないといったような心配が一部にあることも私はそうだと思いますし、しかしまた,考えようによっては,新しい憲法下のもとに国民はすべて平等だということならば、こんな法律があること自体もおかしいじゃないか、これも議論として私は成り立つ問題だと思いまず。
    要は,特殊な文化をもっておる芸術的な民族であることは,否定できないわけでございまして、そうした方々の生活をどうやって向上させたらいいかという観点から問題を私は見るべきだと思います。
    そこで、生活問題それから住宅問題、教育問題、まあ、さまざま私はあると患います。
    したがって、この辺でやはりこれに対する基本的な政策を何かしらはっきりさせる必要があるんじゃないか。
    私は先生のお話を承りながら昔を思い出して,そんなふうな感じを実は率直にいまいたしております。
     そこで,この問題は,厚生省だけの問題でなくて,民族として特殊な文化を持っておる方々でございますから,文部省にもいろいろ考え方はありましょう、行管のほうにもいろいろ意見はありましょう。
    したがって,きょうお約束申し上げておけるのは,総理府を中心として関係各省一緒になってこのウタリの問題をどう基本的に考えたらいいかということを積極的にひとつ研究いたします。
    そのことだけはきょうの段階でお約束を申し上げておきたいと思います。
    ○岡田(春)分科員
     厚生大臣も積極的な御意見で,私もそういう御答弁をいただくならばぜひ期待をかけたいと思っていますが,もう一度申し上げますけれども、アイヌ民族というのは、これは日本人であることは間違いない。
    まあ,私はアイヌ系日本人ということぽを使うのですが,というのは、和人とは異なっているわけですよ。
    これは人種的にも歴史的にも違う。
    それからまた、文化の面でもたいへんすぐれたものと素質かあるわけです。
    こういう点ではやはり私,いま抜本的にひとつやってみようと,こういうお話ならば、いままで政府がとっておった政策は,目的上ではどうか知れないが,いわゆる同化政策,実際においてアイヌ民族が消滅してしまうような政策であった。
    それが法律においては対等だという名のもとにも実際には消滅をさせて,アイヌ民族というアイヌ系日本人を消滅してしまうという政策だった。
    そういう消滅政策をとっても、アイヌ民族の問題というのはそう消滅になりません。
    やはりこれは少数民族としての民族問題として考えるべきではないか。
    私はそこで民族問題としての位置づけを確立して、そして民族的な資質を発展させるようにすることが必要だと思うのです。
    そういう点で、いまこれは開発庁の長官にも来てもらうようお願いしているのですが、主査、来ないので質問ができなくて因るのですけれども‥‥‥
    ○倉成主査
     もうちょっとやっていてください。
    ○岡田(春)分科員
     これは厚生大臣からも国務大臣としてひとつ意見を伺っておきたいと思うのですが、各省と話し合ってと、こういうお話ですが、私はこの際、アイヌ民族の代表の人にも参加してもらう必要があると思う。
    何か和人のほうだけでかつてにきめてしまうという態度そのこと自体が問題なので,ぜひこれはアイヌ民族の代表もその中に参加した審議会のようなものを考える。
    これは御承知のように、同和対策の審議会というのがありますね。
    これは総理府の審議室が所管でやっていますが、各界各層の有議者が入ってやはりここで抜本的にひとつやってもらう。
    そういう意味で、アイヌ民族の代表者も入ってもらうということについてお約束いただけるかどうか、こういう点もひとつ御意見を伺っておきたいと思います。
    ○齋藤国務大臣
     この問題はアイヌ民族に対する基本的な政策の検討の問題でございますから,当然そうした方々の代表の方々にも入っていただく,そういう機会をつくるならば入ってしただく、これは私は当然だと思います。
    ○岡田{春)分科員
     ちょうど北海道開発庁長官が見えられたが、いまちょうどあなたに対する質問をもう進めちゃって、いま国務大臣としての斎藤さんに伺ったわけですが,もう一度簡単に申しますと,ここでアイヌ民族に対する抜本的な政策を行なう必要がある。
    ということは、若干前置きになりますけれども、アイヌ民族というのは,北海道の先住,先覚民族なんですね。
    これが長年にわたって,いわゆる和人といいますか、これのほうで収奪をして,先ほど局長も、和人から取られることを押えるために北海道の知事は土地の許可の問題なんかもやっている、こういうように社会局長もまた認めたように,和人のほうがどんどん収奪をした。
    一言で言うならば、侵略をし、征服をした
    侵略をされ征服をされたのがアイヌ民族である。
    ですから、やはり抜木的な政策を立てる場合には,この収奪に対する償いといいますか、反省といいますか、その上に立った政策でなければ私はいかぬと思う。
    そういう観点に立って,二の際アイヌ民族に対する故本的な政無をぜひ確立してもらう。
     実はもう一つあるのは,明治三十二年につくられた北海道旧土人保護法という法律がいまだに生きている。
    旧土人保護法などというような差別の明確になった法律が生きているわけですね。
    実際には動いていないというんだが、法律にはメリットがあるんだと社会局長は去年も答弁している。
    これに対してやめるべきかどうかという問題も起こっている。
     そういう点を全体として含めたアイヌ民族に対する抜本的な政策を確立する、少数民族としての政策をこの際やはり日本の政府としては確立する必要がある。
    その問題として私が提案したのは,審議会をつくられたらどうだろうか、総理府の審議室にでも審議会をつくったらどうか。
    同和対策審議会というのがありますね。
    これと同じようにアイヌ民族に対しての審議会をつくったらどうか。
    しかもこの審議会にはアイヌ民族もやはり代表として入ってもらって,率直な意見を出してもらう。
    こういうことをやるようなことについて、北梅道の開発庁長官ですから,北海道の問題はひとつ積極的にやってもらいたい。
    このことはいま厚生大臣からも御答弁をいただきまして,同感だから,これはやろうというお考えですし、これはひとつ北海道開発庁長官として、自治大臣として進めていただきたい。
     もう一つは、北海道の問題でございますので長官に伺っておきたいのは、アイヌ民族の文化というのは非常にすぐれたものがありますが,たとえばユーカラの伝承などといって,文字がないものですから伝承しているわけですね。
    これはアイヌ民族自身がいま残そうというので文字化している。
    これなんかでも,自分の経費で、自分の負担で苦しいながらやっているわけですよ。
    しかもウエベケレというのがあるそうです。
    このウエベケレというのは、北海道の日高にあるアイヌ民族の研究家 が自費でやっている。
    本にして五十巻になるそうです。
    こういうものは、やはり厚生省にしても北海道開発庁にしても、自分のほうの所管外であっても,これは文部省になるかもしれませんが,こういうものには金を出して,重要な文化資産ということですから,ひとつ積極的に援助をするようなことも、北海道開発庁長官としても積極的な姿勢が私は望ましいのですが,この点を伺っておきたい。
    ○江崎国務大臣
     第一点のウタリ問題でありますが,この生活環境、所得状況、社会生活の実際等々から見まして,確かに本州の人々との格差としうものは非常に大きいものがあります。
    よくわかります。
    いま御提案の審議会をつくるかどうかということにつきましては、厚生大臣からも御答弁があったそうですが、十分関係省庁協議をいたしまして、そういう形で進めることが望ましい。
     私、実は質問要旨をちょうだいいたしまして,たとえば同和対策があるように,北海道開発庁で当然ウタリ対策といいますか,そういう問題があるのじゃないかという話を先ほどもしてわたわけです。
    そうすると、事務当局の言いますのには、同和対策のときに、あなたですか、あるいは他の方を含めて,ひとつウタリ対策をやろうという話が当時あったときに、むしろウタりの人々が積極的でなかった、それは一体どういうことだろうか、たとえばプライドの問題、これはいろいろあろうかと思いますが、その辺はどうかと言ったところが,なおその当時の状況をつまびらかに調査いたしますというところで,私はちょっと総理に会う所要がありましてこちらのほうに回ったわけでありますが、そういう過去の経緯等も十分調べまして,まさにそういう総合対策を今後樹立してウタリのためにはかっていく,これは大事なことだと思いますので,むしろ北海道開発庁長官としては各関係省庁に激励、懇請するというような立場をとってでも推し進めてまいりたいと思います。
     なお第二点のウエベケレ,これは五十巻から成るもので、金田一京助先生のお弟子の知里真志保さんですか、自費をもって一生懸命研究して今日完成されたということを聞いております。
    これは学術的価値の高いものであれば、当然文部省がその研究の成果を刊行物として補助する,そういう制度もあるように聞いておりますので,これは,文部政務次官もあそこにおられますが,ぜひひとつ協議をいたしまして,これはわが少数民族の高い文化というものを将来に伝える意味からも望ましいことだと思います。
    特に金田一先生がなくなられたあと火が消えるというようなことがあってはなりませんので,こういうものについては、特に北海道開発庁としても文部省を中心にひとつできるだけ補助が実現するように推進をしてまいりたい。
    ○岡田{春)分科員
     もう時間がないので聞けないのですが‥‥‥
    ○倉成主査
     岡田君,簡単に願います。
    ○岡田(春)分科員
     若干あなた勘違いがあるのですよ。
    完成したんじゃない、いまやっているのです。
    それは金田一博士の問題となりますと、アイヌ民族からは問題があるのです。
    金田一博士をアイヌ民族が信頼したかどうかというのはまた別問題です。
    知里博士の問題になるとまた別ですが、いまやっておるのは新しい問題です。
    萱野という人がやっている。
    第一巻をいまようやく始めたというところ
    です。
    ですから、これは前のと全然違うのですから、ちょうど政務次官もおられまずから、ひとつお調ベいただいて,ぜひ補助をいただきたい
     最後に私が伺っておきたいのは、ウタリ対策の中で、民族ということになると、ウタリに自主性をできるだけ与えなければだめです。
    ところが,北海道ウタリ協会というのはどうですか。
    一年に六十万円補助金を出して,そして道庁の補助機関みたいに道庁の中にあるのです。
    これでは自主性はないです。
    こういう点もやはり抜本的に考えて,ウタリに自主性を与えるということについてもお考えをいただきたい。
    そういう点も根本問題としてお考えをいただきたい。
     それからもう一つ,これで終わりますが,昨年の予算のときに, アイヌ民族から、福祉基金をぜひつくってくれ──金額だって少ないのですよ。
    三億円なんです。
    それでもいいから福祉基金をつくってくれということで、厚生省もその当時やる気になって大蔵省に話をしたら,うまくいかなかった。
    しかし,これは昨年の社会労働委員会のここにおられる社会局長の答弁によると,ことしは調査費だけつけたが、 「できれば四十八年度からそれを予算上も実施に移したい,大蔵省もウタリに対してある程度の予算を組むということは反対ではございませんので、計画さえしっかりしたものを持っていけば、これは実現可能だと思います。」 ここまではっきり言っているのです。
    ところが,ウタリの福祉基金はことしの予算要求に出てないのです。
    調査費だけつけて,あとはそのままにしてしまった。
    私はこういうことをやってはしけないのだと思う。
    ウタリの人に対してここまで約束しているのならば,四十八年度でどうしてもできなければ,これはもう一度調査費をつけるなり何なりして、この次の年度にやりますとかなんとかということをはっきりしてもらわないと,まさに背信行為だといわなければならない。
    これは実際に今後おやりになるのかどうなのか
    ,この点を含めて明快な御答弁を伺って、私は質問を終えたいと思うのです。
    ○加藤{威)政府委員
     ウタリ福祉基金につきましては、確かに先生御指摘のような事実があったわけでございます。
    これは実は四十八年度でもできれば具体化したいと考えたのでございますが、問題は、やはりその実態調査を踏まえた上でその福祉基金をつくるかどうかということを要求しようとしたわけでございますが、その実態調査が予算編成までに間に合わなかったという事実があるわけでございます。
    そういうことで四十八年度予算につきましてはウタリ基金というものは具体化できなかったわけでございます。
    現に北海道庁からの四十八年度予算の、ウタリについてこういうことをやってもらいたいという中にも、ウタリ基金の問題は出てないわけでございます。
    そういうことで道庁もやむを得ないと認めたわけでございます。
    今後につきましては、この実態調査を踏まえましてウタリ福祉基金という形でやったらいいのかどうか,あるいは補助金政策でやったらいいのかどうか,そういう点を含めまして十分考えたいと思います。
    とにかく対策を打ち出すということにいたLたいと思います。
    ○岡田{春)分科員
     これで終わります。