Up 「萱野茂予算」獲得 作成: 2017-03-07
更新: 2017-03-07


      第71回 衆議院 予算委員会第三分科会 昭和48年3月5日 第3号,1973.
    http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/071/0388/07103050388003.pdf
    ○岡田{春)分科員
     ‥‥‥
     もう一つは、北海道の問題でございますので長官に伺っておきたいのは、アイヌ民族の文化というのは非常にすぐれたものがありますが,たとえばユーカラの伝承などといって,文字がないものですから伝承しているわけですね。
    これはアイヌ民族自身がいま残そうというので文字化している。
    これなんかでも,自分の経費で、自分の負担で苦しいながらやっているわけですよ。
    しかもウエベケレというのがあるそうです。
    このウエベケレというのは、北海道の日高にあるアイヌ民族の研究家 が自費でやっている。
    本にして五十巻になるそうです。
    こういうものは、やはり厚生省にしても北海道開発庁にしても、自分のほうの所管外であっても,これは文部省になるかもしれませんが,こういうものには金を出して,重要な文化資産ということですから,ひとつ積極的に援助をするようなことも、北海道開発庁長官としても積極的な姿勢が私は望ましいのですが,この点を伺っておきたい。
    ○江崎国務大臣
     ‥‥‥
     なお第二点のウエベケレ,これは五十巻から成るもので、金田一京助先生のお弟子の知里真志保さんですか、自費をもって一生懸命研究して今日完成されたということを聞いております。
    これは学術的価値の高いものであれば、当然文部省がその研究の成果を刊行物として補助する,そういう制度もあるように聞いておりますので,これは,文部政務次官もあそこにおられますが,ぜひひとつ協議をいたしまして,これはわが少数民族の高い文化というものを将来に伝える意味からも望ましいことだと思います。
    特に金田一先生がなくなられたあと火が消えるというようなことがあってはなりませんので,こういうものについては、特に北海道開発庁としても文部省を中心にひとつできるだけ補助が実現するように推進をしてまいりたい。
     ‥‥‥
    ○岡田(春)分科員
     若干あなた勘違いがあるのですよ。
    完成したんじゃない、いまやっているのです。
    それは金田一博士の問題となりますと、アイヌ民族からは問題があるのです。
    金田一博士をアイヌ民族が信頼したかどうかというのはまた別問題です。
    知里博士の問題になるとまた別ですが、いまやっておるのは新しい問題です。
    萱野という人がやっている。
    第一巻をいまようやく始めたというところ
    です。
    ですから、これは前のと全然違うのですから、ちょうど政務次官もおられまずから、ひとつお調ベいただいて,ぜひ補助をいただきたい


    岡田春夫の働きにより,萱野への「援助」が実現する。
    以下が,この「援助」の<費用対効果比>である:
      asahi.com 2006-08-12
     http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200608120394.html
    アイヌの遺産「金成マツノート」の翻訳打ち切りへ
    2006年08月12日23時04分

     アイヌ民族の英雄叙事詩・ユーカラが大量に書き残され、貴重な遺産とされる「金成(かんなり)マツノート」の翻訳が打ち切りの危機にある。言語学者の故・金田一京助氏と5月に亡くなった萱野茂氏が約44年間に33話を訳した。さらに49話が残っているが、事業を続けてきた北海道は「一定の成果が出た」として、文化庁などに07年度で終了する意思を伝えている。

     ユーカラは、アイヌ民族の間で口頭で語り継がれてきた。英雄ポンヤウンぺが神様と闘ったり、死んだ恋人を生き返らせたりする物語。

     昭和初期、キリスト教伝道学校で英語教育を受けた登別市の金成マツさん(1875〜1961)が、文字を持たないアイヌの言葉をローマ字表記で約 100 冊のノートに書きつづった。92の話(10話は行方不明)のうち、金田一氏が9話を訳し、萱野氏は79年から道教委の委託で翻訳作業を続けてきた。その成果は「ユーカラ集」として刊行され、大学や図書館に配布された。アイヌ語は明治政府以降の同化政策の中で失われ、最近は保存の重要性が見直されつつあるが、自由に使えるのは萱野氏ら数人に限られていた。

     文化庁は「金成マツノート」の翻訳に民俗文化財調査費から28年間、年に数百万円を支出してきた。今年度予算は1500万円のうち、半額を翻訳に助成。同予算は各地の文化財の調査にも使われる。

     これまでのペースでは、全訳するのに50年程度かかりかねない。文化庁は、「一つの事業がこれだけ続いてきたことは異例」であり、特定の地域だけ特別扱いはできないという。これをうけ、北海道は30年目を迎える07年度で終了する方針を関係団体に伝えた。

     道教委は「全訳しないといけないとは思うが、一度、区切りを付け、何らかの別の展開を考えたい」としている。

     樺太アイヌ語学研究者の村崎恭子・元横浜国立大学教授は「金成マツノートは、日本語でいえば大和朝廷の古事記にあたる物語で、大切な遺産。アイヌ民族の歴史認識が伝えられており、全訳されることで資料としての価値が高まる」と話している。

    この<費用対効果比>は,「金成マツノート翻訳」が「アイヌ利権」であったことを示す。