Up 「利権」概論 作成: 2019-10-13
更新: 2019-10-13


    商品経済は,《個が,生きるために必要な物を金で買う》によって,金が人から人へ回るシステムである。
    生きているとは,金の循環が自分に届いているということである。

    すべての者をその中に収める金の循環システムが出来上がっているということは,改めて考えれば驚くべきことである。
    実際,これは一朝一夕で成ったのではない。
    突き詰めれば,人類の進化史全体を要したということになる。
    (但し,このような言い方をしてしまえば,地球進化史全体を要した,‥‥‥ のようになってしまうが。)


    金の移動は,<買う者>から<売る者>への移動である。
    そこで,個は<売る者>と<買う者>の二役をやることになる。
    誰もが<売る者>になれる?──無一物の者は?
    だいじょうぶ,<労働>が売り物になる!

    商品経済の基本は,この循環の放任である。
    「神の見えざる手」が働き,放任こそが最善になるというわけである。

    但し,この「神の見えざる手」は,進化論の「自然選択」にあたる。
    自然が "All's right with the world !" (Robert Browning) なのは,間引きがしっかり働いているからである。
    商品経済は,弱者・敗者を着実に現していく。

    商品経済社会は,弱者・敗者の手当を制度にしなければならない。
    かわいそうだからではない。
    弱者・敗者になる可能性がだれにもあるからである。
    社会を安定させようとすれば,<安心>をベースにしなければならない。
    こうして,弱者・敗者の手当が自ずと制度化される。


    <手当>は,金の循環をつくる。
    この金に,人が集まってくる。
    これは,つぎの4タイプになる:
    1. 手当受給者になろうとする者
    2. 受給者から,彼らの得た金を引き出そうとする者
    3. <手当>の解釈を拡げて,関接的受給者になろうとする者
    4. 以上の者たちの支援役を生業 (の一部) にしようとする者

    この集合は,構造化して系になる。
    これが,「利権」である。


    「利権」に対するひとのイメージは,「不公平」「狡い」である。
    こうなるのは,このときの<金を得る>が,<もらう>から始まるからである。
    そしてその金が,税金だからである。
    ──「利権」を批判する者は,この点を強調するのに「血税」のことばを用いる。

    しかし,「不公平」「狡い」は,商品経済の当たり前である。
    ひとは,<手当>の口があれば高額獲得を画策し,そして額の口実を立てる段になれば内容を盛る。
    「不公平」「狡い」は,ひとがやるからけしからんのであって,自分がやる分にはかまわないというものである。
    この機微,よくよく吟味すべし