Up 「アイヌ利権」研究方法論 : 要旨 作成: 2019-10-08
更新: 2019-10-08


    「アイヌ利権」は,内容が大きく含蓄が深い主題である。
    これを論じようとするときは,方法論を立てることから始めることになる。

    あたりまえだが,「利権」の意味を理解していないことには,話にならない。
    ひとは「利権=けしからん」にするが,これは「利権」の意味を理解していない(てい)である。

    人は,商品経済のなかで生きる。
    商品経済のなかでしか生きられない。
    商品経済は,人の「自然」である。
    「利権」は,この商品経済の含意 (implication, 必要条件) である。
    「利権」の否定は,商品経済の否定であり,自分の「自然」の否定である。
    実際,ひとは個々になにがしかの利権に与して生きている。

      例. 年金生活者は,「年金利権」者である。


    また,"アイヌ" がどのように進化してきたかを理解していないことには,話にならない。
    「アイヌ利権」は,"アイヌ" 運動変遷史の中に位置づく。
    その歴史は,「"アイヌ" 進化史」である。

      念のため:
      アイヌは終焉した存在である。
      本論考は,<アイヌ終焉後に「わたしはアイヌ」を外にデモンストレーションする者>をアイヌと区別するために,これを "アイヌ" と言い表している。

    ここで謂う「進化」は,生物学の謂う「進化」である。
    その内容は,<分化・絶滅>の構造力学である。
    "アイヌ" 進化は,同化"アイヌ",文学"アイヌ",政治"アイヌ" の順次降板を経て,経済"アイヌ" を現生種にしている。

    そして,「アイヌ振興事業」の「アイヌ」が,"アイヌ" の現在形である。
    "アイヌ" は,「アイヌ振興事業」の「アイヌ」を務める者のことになった。


    政治"アイヌ" は,"アイヌ" の権利獲得を運動した。
    得ようとしたものは,"アイヌ"権益である。
    そこで,これの根拠法となる「アイヌ法」獲得を運動し,ついにこれを果たす。
    しかし,結果は「こんなはずではなかった」になる。

    これ以前は,"アイヌ"権益を<丼勘定>と<馴れ合い>でやってきた。
    例えば,つぎのような:
       asahi.com 2006-08-12
     
    アイヌの遺産「金成マツノート」の翻訳打ち切りへ
     アイヌ民族の英雄叙事詩・ユーカラが大量に書き残され、貴重な遺産とされる「金成(かんなり)マツノート」の翻訳が打ち切りの危機にある。言語学者の故・金田一京助氏と5月に亡くなった萱野茂氏が約40年間に33話を訳した。さらに49話が残っているが、事業を続けてきた北海道は「一定の成果が出た」として、文化庁などに07年度で終了する意思を伝えている。
     ユーカラは、アイヌ民族の間で口頭で語り継がれてきた。英雄ポンヤウンぺが神様と闘ったり、死んだ恋人を生き返らせたりする物語。
     昭和初期、キリスト教伝道学校で英語教育を受けた登別市の金成マツさん(1875〜1961)が、文字を持たないアイヌの言葉をローマ字表記で約100冊のノートに書きつづった。92の話(10話は行方不明)のうち、金田一氏が9話を訳し、萱野氏は79年から道教委の委託で翻訳作業を続けてきた。その成果は「ユーカラ集」として刊行され、大学や図書館に配布された。アイヌ語は明治政府以降の同化政策の中で失われ、最近は保存の重要性が見直されつつあるが、自由に使えるのは萱野氏ら数人に限られていた。
     文化庁は「金成マツノート」の翻訳に民俗文化財調査費から28年間、年に数百万円を支出してきた。今年度予算は1500万円のうち、半額を翻訳に助成。同予算は各地の文化財の調査にも使われる。
     これまでのペースでは、全訳するのに50年程度かかりかねない。文化庁は、「一つの事業がこれだけ続いてきたことは異例」であり、特定の地域だけ特別扱いはできないという。これをうけ、北海道は30年目を迎える07年度で終了する方針を関係団体に伝えた。
     道教委は「全訳しないといけないとは思うが、一度、区切りを付け、何らかの別の展開を考えたい」としている。
     樺太アイヌ語学研究者の村崎恭子・元横浜国立大学教授は「金成マツノートは、日本語でいえば大和朝廷の古事記にあたる物語で、大切な遺産。アイヌ民族の歴史認識が伝えられており、全訳されることで資料としての価値が高まる」と話している。

     「 28年間、年に数百万円を支出してきた。今年度予算は1500万円のうち、半額を翻訳に助成。‥‥‥ これまでのペースでは、全訳するのに50年程度かかりかねない。」
     「 92の話(10話は行方不明)のうち、金田一氏が9話を訳し」
    であるから,つぎのペースの翻訳作業である:
        ( 92 − 9 ) ÷ ( 28 + 50 ) = 1.06 話/年
    よって,つぎのようになる:
        1話の翻訳料 = 数百万円


    しかし「アイヌ法」が立てられれば,"アイヌ"権益は法治になる。
    <丼勘定>と<馴れ合い>は,法治に馴染まない。
    法治は,手当を受ける者の定義と,該当者の登録から始めねばならない。
    しかし,これは成ることではない。
    そこで,「アイヌ振興事業」の計画書を提出させ,それを査定し,交付金を出すというやり方になる。
    計画書は,短期成果回収がこれのフォーマットである (「中期目標」)。

    かくして,《28年間,年に数百万円,1年に1話》の時代は終わる。
    <丼勘定>と<馴れ合い>を重宝してきた者は,「こんなはずではなかった」になるわけである。


    「アイヌ利権」は,「アイヌ交付金」利権である。
    今日「アイヌ交付金」は,「アイヌ振興事業交付金」になった。
    「アイヌ振興事業」は,即ちアイヌ観光事業である。
    このとき,「アイヌ利権」は,<"アイヌ" が得するシステム>からずれていく。
    実際,「アイヌ利権」は,<"アイヌ" 使役システム>──「アイヌ使役」の今日版──である。

    「アイヌ利権」を批判する者は,だいたいが,これを<"アイヌ" が得するシステム>と定めて批判している。
    このタイプの批判は,ミスリーディングになる。
    そして,"アイヌ" イデオロギーを無用に元気にさせてしまう。


    「アイヌ利権」は,批判するものではなく,定位するものである。
    「アイヌ利権」は,商品経済のダイナミクスである。
    それは,<浮沈>を運動し,変容する。
    「アイヌ利権」研究として行うことは,この構造とダイナミクスの捉えである。
    この研究の方法論は,「生態学」「進化学」である。