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久保寺逸彦 (1952), pp.43
祖霊祭祀はアイヌ語で (1) nurappa (2) shinurappa (3) shinnurappa (4) icharpa と呼称して、全く同意義に用いている。
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同上, p.44
アイヌの祖霊祭祀 [は] ‥‥ 単独の宗教儀礼としても行われるが、多くの場合、他の多くの祭祀 kamui-nomi の中に含められるというよりも寧ろその一部として必ず行われるものである ‥‥‥
アイヌの宗教に於いては、祖霊も亦神であって何等区別がない。
従ってその祭が他の神々の祭と同時に行われるのが当然であろう。
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同上, pp.44,45
祖霊祭祀はいつと限らず、随時行われるものである ‥‥
祖霊祭祀 nurappa が随時行われた理由は、稗 piyapa を以て酒を醸した時は何時でも行い得たからである。
先に叙べた様に、稗酒を沢山醸して春・秋・冬の三季に定期的に盛大に行ったものが、大祖霊祭 shinurappa であるが、その中でも最も盛大に行われたものが 1〜3月にかけて行われるものであった。
何故かとなれば、冬季は
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酒を醸してもその醗酵状態が理想的で、従って冬酒 mata-sake は最も美味とされ、
又一方比較的に閑散無聊の冬籠りの時であり、
予ねて村々の家々で慈育していた仔熊 peurep、梟 kotankor-kamui、狢 moyuk、狐 chironnup、鷲 kapachir 等の鳥獣を送る祭りが行われる楽しい時節
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であったからでもある。‥‥‥
祖霊祭祀の当日には親戚・村人・遠近の村人等が招かれるが、その範囲は用意した酒の量の多寡にもよるので、冬季1〜3月頃までの間に各戸で催されるものは、shi-iku (大宴) といって、招待したりされたりして連日の様に盛大に行われたものだった。
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同上, p.48
凡そ、祖霊祭祀の行事は、それが単独で行われる場合でも、或は他の大きな祭祀の中の一部として行われる場合でも、これを二大別して考えられる。
(A) 神々の祭祀と
(B) 戸外の東手 (沙流川筋の村では) なる祭壇 nusa-san の数歩手前の祖霊幣所 shinurappa-ushi で行われる祭祀である。
(A) は如何なる祭祀の場合でも、ほぼ同ーの神に、同ーの形式を以て営まれるもので、禱詞 inonno-itak の内容が異なる位のものである。
(B) は祖霊祭祀の儀礼の中で、最も中心をなす重要な意義を持つ部分である。
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同上, p.49
神々への禱詞は、一句一句ほぼ長さのきまった雅語で綴られて、(節付け sakor して朗々とのべられることもあるが) 多くの場合、低声で側でも聞きとれない程に述べていかれるもので、これは悪神 wen-kamui 等に聞かれてもならないし、また婦女子等に聞かせてもならぬものとされているからである。
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引用文献
- 久保寺逸彦 (1952) :「沙流アイヌの祖霊祭祀」, 民俗学研究, 第16巻, 3-4号, 1952.
収載 : 佐々木利和[編]『久保寺逸彦著作集1: アイヌ民族の宗教と儀礼』, 草風館, 2001, pp.39-69
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