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久保寺逸彦 (1952), p.49-52
筆者は、アイヌの祭祖神を二大別して
(1) 通常祭祀 use-onkami の神と
(2) 尊貴の礼拝 pase-onkami の神
とにすることが出来ると思う。
後者は家系によって、その祭神を異にするもので、決して他人には言わぬ程の重い意味を持つ各家系の守護神の礼拝である。
これは、酒など少い場合には勿体ないとしてその礼拝を省略するのが常である。
今一例を日高国沙流川筋二風谷部落の二谷國松家の祭祀神にとれば、次の諸神が礼拝される。
(1) 通常祭祀神 use-onkami kamui
(A) 屋内にて礼拝する神
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(イ) 火の姥神 Kamui-huchi, Ape-huchi
(ロ) 家主の神 Chise-kor-kamui
(ハ) 家の主人の守護神 Chise-kor-kur sermak epun-kine kamui
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(B) 屋内と戸外とで礼拝する神
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(ニ) 村の守護神 Kotan sermakun epunkine kamui, Kotar-kor kamui
(ホ) 始祖神 Aeoina k arnui
(へ) アベツ沢の沢尻の神
(ト) 門別川の神 Mopetun-onkami
(チ) チカポイ丘の神
(リ) 沢口の水の女神
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(C) 戸外の幣壇で祀る神
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(ヌ) 大幣の神 Nusa-kor kamui
(ル) 森の神 Shirampa kamui
(ヲ) 狩猟の神 Hashinau-uk kamui
(ワ) 水の神 Wakka-ush kamui
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(2) "尊貴神礼拝" pase-onkami の神
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(カ) 熊の王神 Metottush-kamui
(ヨ) 賀張川の奥の神 Kapari-emko-un kamui
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引用文献
- 久保寺逸彦 (1952) :「沙流アイヌの祖霊祭祀」, 民俗学研究, 第16巻, 3-4号, 1952.
収載 : 佐々木利和[編]『久保寺逸彦著作集1: アイヌ民族の宗教と儀礼』, 草風館, 2001, pp.39-69
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