|
久保寺逸彦 (1956), p.104
アイヌの宗教においては (少なくとも現在のわれわれの調査資料や古文献等の研究の上からは)、神々に木幣 inau を供え、禱詞 inonno-itak を捧げることは、男子のみがやることであり、女子はこれに参与する資格を認められない。
女子は身の汚れたものであるから、神々を祀ることなどは、常に遠慮すべきものだという考えが強いからである。
しかし、巫呪の事になると、これに関与するものは、主として女子である。
アイヌ語で、巫呪のことを Tusu、それを行う巫女を Tusu-menoko というが、
詞曲などに出てくる雅語では、Nupur (巫術)、Nupur-pe, Nupur-mat (いずれも巫女の意) などが用いられる。
Nupur は pan (淡い) に対する形容詞で、「濃い」「強い」「畏敬すべき」「恐るべき」「尊き」等の意を持ち、名詞としては、「畏るべき法術」の意を持ち、Tusu よりは語義が広い。
|
|
引用文献
- 久保寺逸彦 (1956) :「アイヌ文学序説」, 東京学芸大学研究報告, 第7集別冊, 1956
- 『アイヌの文学』(岩波新書), 岩波書店, 1977
|