Up 死体は山へ投げるもの 作成: 2019-01-07
更新: 2019-01-07


      久保寺逸彦 (1956), p.195
    埋葬を終えると、墓地からは、他人・親戚・遺族の順で帰途に就くのであるが、この際、誰でも堅く taboo として守らなければならぬことは、
     (1) 後を振返ってはならないこと、
     (2) 途中どこへも寄り道せず、まっ直に喪家に帰らなければならぬこと、
     (3) 哭泣 rai-chish-kar してはならないこと
    などである。
    ‥‥ 死体は山へ投げる (raikur osura) もので、投げてしまった以上、あとを顧みず、ひたすら死霊の追躡(ついじょう)から逃れ、身の安全を図[る] ‥‥
    喪家に着くと、戸外に用意してあった樽の水を柄杓でかけてもらい、手や顔を洗い、鋏で、男女を問わず、前髪を剪ってもらう。
    髪を剪ることを shiapke という。‥‥
    葬送に着て行った厚司 attush、刺繍衣 chikarkarpe、刺繍単衣 kapar-amip 等は、すべて戸外で脱ぎ、棹にかけて置き、風に当てる (amip a-e-rera-kare)、別に用意した着物に着換えて、屋内に入る ‥‥


    引用文献
    • 久保寺逸彦 (1956) :「北海道アイヌの葬制一沙流アイヌを中心として」
      • 民俗学研究, 第20巻, 1-2号, 3-4号, 1956.
      • 収載 : 佐々木利和[編]『久保寺逸彦著作集1: アイヌ民族の宗教と儀礼』, 草風館, 2001, pp.103-263