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久保寺逸彦 (1956), p.195
埋葬を終えると、墓地からは、他人・親戚・遺族の順で帰途に就くのであるが、この際、誰でも堅く taboo として守らなければならぬことは、
(1) 後を振返ってはならないこと、
(2) 途中どこへも寄り道せず、まっ直に喪家に帰らなければならぬこと、
(3) 哭泣 rai-chish-kar してはならないこと
などである。
‥‥ 死体は山へ投げる (raikur osura) もので、投げてしまった以上、あとを顧みず、ひたすら死霊の追躡から逃れ、身の安全を図[る] ‥‥
喪家に着くと、戸外に用意してあった樽の水を柄杓でかけてもらい、手や顔を洗い、鋏で、男女を問わず、前髪を剪ってもらう。
髪を剪ることを shiapke という。‥‥
葬送に着て行った厚司 attush、刺繍衣 chikarkarpe、刺繍単衣 kapar-amip 等は、すべて戸外で脱ぎ、棹にかけて置き、風に当てる (amip a-e-rera-kare)、別に用意した着物に着換えて、屋内に入る ‥‥
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引用文献
- 久保寺逸彦 (1956) :「北海道アイヌの葬制一沙流アイヌを中心として」
- 民俗学研究, 第20巻, 1-2号, 3-4号, 1956.
- 収載 : 佐々木利和[編]『久保寺逸彦著作集1: アイヌ民族の宗教と儀礼』, 草風館, 2001, pp.103-263
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