遺骨を特別なものにするのは,主に仏教の考えである。
これをひとの自然のように思っている者は,その手の宗教に毒されている者である。
アイヌにとって,遺骨は意味のないものである。
亡者は,他界に住み,この世と絶縁している存在である。
遺骨は,ただの抜け殻である。
遺骨の中に礼拝するようなものは何も無い。
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久保寺逸彦 (1956), p.173
墓壙の深さは、2.5尺〜3尺位 (深くても4尺) で極めて浅い。
あいぬ風俗略志の著者村尾元長氏が、
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穴は深さ4尺縦5尺 (死体に由り長短あり) 横3尺 (地方に由り同じからず)、北首東首等、地方に依り同一ならず。
穴を蓋ふに柴薪等を積み、僅に土を振掛け置けり。
故に狐狼の害を蒙らざるは稀にして、旅中原野に人骨の雨曝しになれる者を認むるは、概ね「アイヌ」の骸骨なり」
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と述べているのは、蓋し実状であろう。
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実際,アイヌにとっては,自分の抜け殻が「狐狼」の食べ物として役に立つというのが,むしろ本望かも知れないのである。
引用文献
- 久保寺逸彦 (1956) :「北海道アイヌの葬制一沙流アイヌを中心として」
- 民俗学研究, 第20巻, 1-2号, 3-4号, 1956.
- 収載 : 佐々木利和[編]『久保寺逸彦著作集1: アイヌ民族の宗教と儀礼』, 草風館, 2001, pp.103-263
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