Up 遺骨を意味づけない 作成: 2019-01-07
更新: 2019-01-07


    遺骨を特別なものにするのは,主に仏教の考えである。
    これをひとの自然のように思っている者は,その手の宗教に毒されている者である。

    アイヌにとって,遺骨は意味のないものである。
    亡者は,他界に住み,この世と絶縁している存在である。
    遺骨は,ただの抜け殻である。
    遺骨の中に礼拝するようなものは何も無い。

      久保寺逸彦 (1956), p.173
    墓壙の深さは、2.5尺〜3尺位 (深くても4尺) で極めて浅い。
    あいぬ風俗略志の著者村尾元長氏が、
     「 穴は深さ4尺縦5尺 (死体に由り長短あり) 横3尺 (地方に由り同じからず)、北首東首等、地方に依り同一ならず。
    穴を蓋ふに柴薪等を積み、僅に土を振掛け置けり。
    故に狐狼の害を蒙らざるは稀にして、旅中原野に人骨の雨曝しになれる者を認むるは、概ね「アイヌ」の骸骨なり」
    と述べているのは、蓋し実状であろう。

    実際,アイヌにとっては,自分の抜け殻が「狐狼」の食べ物として役に立つというのが,むしろ本望かも知れないのである。


    引用文献
    • 久保寺逸彦 (1956) :「北海道アイヌの葬制一沙流アイヌを中心として」
      • 民俗学研究, 第20巻, 1-2号, 3-4号, 1956.
      • 収載 : 佐々木利和[編]『久保寺逸彦著作集1: アイヌ民族の宗教と儀礼』, 草風館, 2001, pp.103-263