相手への威圧を以て,自分の優位を立てる。
これが,「威張る」である。
「威張る」は,自分の優位が自ずと立たない者のすることである。
実際,自分の優位が自ずと立たないので,<威圧>のパフォーマンスで自分の優位を立て,顕示するわけである。
「自分の優位が自ずと立たない」のは,「実際のところは,相手とどっこいどっこいか,それ以下」だからである。
「威張る」は,劣った者のすることである。
こうして,アイヌに対して威張る和人の話は,劣った和人の話である。
翻って,アイヌに優しく対する和人の話は,よい和人の話である。
Bird, Isabella (1831-1904)
Unbeaten Tracks in Japan. 1880
金坂清則 訳注 『完訳 日本奥地紀行3 (北海道・アイヌの世界)』, 平凡社, 2012.
p.163
函館を発って以来、三、四人以上の和人が一緒にいるのを目にしたのはここが初めてだったが、その限りでは、先住民[アイヌ]に比べると姿形が見苦しく表情にも力が感じられず、〈体つき〉も男女ともに弱々しい感じが強くした。
蝦夷の日本人[和人]は本州の日本人とはまったく似ていなかった。
彼らは英国の小農に比べた時のカナダやオーストラリアへの入植者にも似て、もっと粗野で自由であり、服装も振舞いももっと無頓着だった。
馬が安い上にたくさんいる影響を受け、人の常として、乗り方もアイヌのまねをし、胡坐をかいて乗っているのである。
また紋鼈にやってくるまでに見た日本人[和人]はみな非恒常的で不安定な仕事を生業にしており、本州の農民とはたいへん違っていた。
ひまな時間は「飲み屋」でぶらぶらしていることが多く、自分たちより下の民族[アイヌ]に向かっていばる習慣のせいで進歩もまったくない。
p.179
礼文華は恐ろしいほど孤立したところであるが、このことがこの上ない魅力をなす。
宿の主人[斎藤義道]は心優しい人物で、アイヌにもとても愛着を抱いている。
アイヌに関わる任務を負う役人が有珠や礼文華の役人[駅逓所取扱人]のように友愛の情をもってアイヌに接するなら、嘆かわしい状況はもっと減るにちがいない。
この主人もアイヌが正直で悪意がないことを大変ほめた。
そして、出発なさる前に会ってやってもらえますかと尋ね、私が了解すると、20人の男たちが馬と一緒に中庭に入ってきた。
ほとんどは子供連れで、子供はとても可愛かった。
彼らは外国人に会うのは今日が初めてなのに、関心がないせいか礼儀正しいせいか、日本人とは違ってじろじろ見たり押し寄せてきたりしなかった。
その挨拶はいつもながらていねいだった。
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