小川隆吉『おれのウチャシクマ』, 寿郎社, 2015.
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p.119
この事件の頃、関西の進学塾河合塾がアイヌの問題でしくじったんだ。
何でも、授業で使う教科書っていうのか本のなかで、「アイヌは最早や存在していない」という意味のことが書いであったそうだ。
そのことが、関西の部落解放同盟を通じて山本一昭に──当時、結城庄司が亡くなって山本がアイヌ解放同盟の代表だった──、それから俺の所に伝わってきた。
それで、その河合塾に電話を入れて確かめたんだ。
そしたらなんと三人も飛行機で飛んできた。
生活館に入るなり今で言う土下座みたいな恰好をして「アイヌをテーマにして十分な勉強をしていなかった。
申し訳ない」って言う。
そのあと、関西の大学で講演をしてくれってきて、関西大学と神戸学院大学に、二回話しに行った。
塾の働きかけだったのかどうか背景は知らなかったが。
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アイヌの問題でしくじった企業は,この河合塾のように対応する。
「なんと三人も飛行機で飛んできた」の<誠意>を見せ,営業的土下座をし,そして,講師をやらせる。
《機嫌をとり,持ち上げる》ということである。
いちばんやってならないことは,《己の理を立てる》である。
ただしこの対応は,利己主義の対応である。
「大人の対応」ではあるが,「嫌らしい対応」である。
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