"アイヌ" の一類型に,「アイヌに対し悪を為す者の退治」を行動するものがある。
この "アイヌ" を, 「警察"アイヌ"」と呼ぶことにする。
警察 "アイヌ" は,<悪>検挙のシステムをつくり上げる。
システムは,《通報 → 捜査 → 新聞報道》の一体化である:
小川隆吉『おれのウチャシクマ』, 寿郎社, 2015.
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pp.116,117
北海道立啓成高等学校地理Bの授業で先生が、「アイヌとの結婚を避けるために」との見出しを黒板に大書きした。
後ろの席で笑っている女生徒を指さし「笑っている場合ではない、しっかり勉強しろ」。
その後は教室にくすくす笑い。
その中で男性教師は手振り身ぶり大声で次のように話しかけた。
「君たちは今後も北海道で暮らすことになる。そこで大切なのはアイヌとの結婚を避けること。
それには、アイヌをきちんと見分けること。一見して眉毛が太い。私はアイヌが自宅に来て風呂に入ったのを見たことがある。熊が浮かんでいるよう、全身毛だらけ。今はこのような極端な人が見られないと思うがそれだけに見分け方が大切だ」と話した。
この教室にアイヌの生徒がおり、翌朝九時に生徒と両親が生活館のデスクの前で話された。
あまりにひどい話なので、ちょうど集まっていた本部三役に伝えると驚いた三役は事実確認をすると決めた。
事務局長は当該学校長に電話で知らせた。
当日、校長室のソファーに本部三役と私が座ると、校長が挨拶し、発言者がみなさんにお詫びをしたいとの申し出がありましたので、と言ったとき、一人の男性教師が入ってきた。
校長の横に立つと「今回の私が行った授業の内容は事実です」と言った瞬間土下座して、許してください、許してくださいが続く。
アイヌ側からの発言が遅れ気味になった。
私は、「このような事実があったかを確認するのが目的であり、許す許さないは今後の問題です。今日はこの辺で帰りましょう」と言った。
学校を後にしようとしたときにマスコミの質問攻めにあった。
翌日の北海道新聞は写真入りででかでかとのった。
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このシステムは,「アイヌ問題」の発生があり得るところ──学校,企業等──にとって,不気味である。
こうして,これらは "アイヌ" を警戒するものになる。
「警戒」の内容は,「係わらないのが身のため」である。
「係わらないのが身のため」は,つぎに進む:
「アイヌのことで問題を起こしてしまうことがないよう,
アイヌの特定を普段からきちんとやっておく」
「アイヌをきちんと見分けられること」は,この文脈で出てくるものである。
警察"アイヌ" の<悪>検挙のシステムは,「係わらないのが身のため」の形の「アイヌ差別」と悪循環する──というわけである。
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