Up 『北海道旧土人保護法』 作成: 2016-11-05
更新: 2016-11-05


    「土地所有」の概念は,すべてのものが商品価値に変わる商品経済の産物である。
    物が商品価値になり,労働力が商品価値になり,そして土地が商品価値になる。
    (いまは,CO2 削減が国の間で売り買いされるというわけで,大気も商品価値になった!)

    「土地所有」は,いまの法の概念である。
    法には,運用原則があり,そのうちに「不遡及」がある。
    法は,これの施行時以前に遡って適用されてはならない。
    法は時代依存であるから,「不遡及」が運用の原則になるわけである。

    一方,アイヌイデオロギーの者は,「土地所有」の概念を普遍概念にする者である。
    こうして,「アイヌの土地」を唱える。


    アイヌは,「土地所有」の概念をもたない。
    動植物が「土地所有」の概念をもたないのと同じである。
    動植物の「土地」は,なわばりである。
    土地は,所有するものではなく,棲むものである。
    なわばりは,これを獲った者が(ぬし)である。

    アイヌのチャシは,なわばり争いの砦である。
    アイヌの「土地」は,「なわばり」である。

    「なわばり」の文化では,「土地の囲い込み」は悪である。
    「土地所有」は,「土地の囲い込み」に他ならないから,悪である。


    「開拓」は,アイヌの土地を奪ったのではない。
    アイヌを土地から追い出したのである。
    アイヌは,「土地所有」の概念をもつ者ではないから,「土地を追い出された」から「権利の訴えをする」を導く者ではない。

    アイヌイデオロギーの者には,「奪う」も「追い出す」も同じことになる。
    アイヌイデオロギーの者にとって土地は,人間が所有するものだからである。

    アイヌにとって土地は,動植物にとっての土地と同じである。
    土地は,いわば,天が生き物に「好きに取り合え」と与えたものである。
    土地に棲むとは,乗っ取ろうとする者から土地を守ることである。
    「守れない」は,「棲む資格が無い」とイコールである。
    そこで,「追い出されるのは,相手が強いからであり,どうしようもないことだ」となる。


    行政は,法治である。
    「アイヌが土地を追われる一方」の状況は無法に進むから,手を打たねばならない。
    そこで,『北海道旧土人保護法」となるわけである。

    特に,『北海道旧土人保護法」は,<思いやり>がどうたらの話ではない。
    単純に,<法治は,無法を嫌う>という話である。

    『北海道旧土人保護法」は,アイヌイデオロギーの手に掛かると,これこそアイヌの土地を収奪する策略だというふうになる。
    アイヌイデオロギーは,この種の<後先(あとさき)の逆転>を平気やってしまう。
    それは,イデオロギーのイデオロギーたる所以として,ものごとを論理構造的に考えることができないためである。