一、 |
家庭の悪風習を矯正し、子弟教育に関する注意を喚起せしむべし。
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二、 |
男子の飲酒の常習を絶対的に禁ずるか又は節せしむべし。
蓋しアイヌ人口の漸減は、アルコール中毒に因ること多きのみならず暴飲は彼等を堕落せしむる第一歩なればなり。
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三、 |
アイヌの精神の遅緩せるは事実なり。
故に之れが緊張をはかり向上発展せしめ、有為なる国民と為さんには、青年会を組織し之れを中心として勇壮なる撃剣等を行はしむべし。
又戦役、忠勇立志並に農業等に関する書籍を備へ、彼等をして自発的に勉学せしむることも亦大に必要なり。
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四、 |
従来一般の人は、アイヌに対し動もすれば「アイヌだから」の言を使用せり。
此はアイヌの感情を害し、相互の誤解を招く基なれば、之れを廃し、土人をして、自ら「アイヌだもの」の念を起さしめざるを要す。
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五、 |
アイヌの和人に接触して、最も嫌忌せられる一原因は衛生思想の乏しきに依る。
之れを指導改善すること肝要なり。
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六、 |
アイヌは旧土人保護法に依り、土地を支給せらるゝ等恩典に浴するも、其の生活は未だ良好の域に達せず。
「衣食足りて礼節を知る」との格言あれば、彼等の活計を根本的に改善すべし、衣食足るに至らば教育も、とみに挙るべし。
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七、 |
旧土人の進歩発展を殺ぐ大なる原因は依頼心の強きにあり。
此の原因に付きては、或は歴史的なりと云ひ、或は保護法の保護の厚きに因ると論ずる者あれども、筆者は歴史的は別として保護法に因るとは信ぜず。
何となれば、同法実施以前より生じたるものなればなり。
其の最大原因としては、彼らに文字無く、現今にても無学なる者多きに因す。
何事を行ふにも決断力に乏しきも、之れがため、社会の事に暗く、自己の行はんとすることは正当なりや否や危み迷ひ、遂には和人に依頼するに至りしものなり。
されば之れが矯正方法としては、彼等の子弟を十分に教育し、特に実社会に必要なる知識を授くること肝要なり。
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