商品経済に乗った狩猟・漁は,《多く獲れるほどよい》になる。
これは,狩猟・漁が「乱獲」になるということである。
乱獲の様が覗い知れる記述を,以下に引く。
最上徳内著・須藤十郎編『蝦夷草紙』, MBC21/東京経済, 1994
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p.66
天明六丙午 [1786] 年 蝦夷国界見分の御用に附て 江戸本町苫(屋)久兵衛と言(う) 者の手船神通丸沖船頭太兵衛、権命に因て松前に着船し 夫より東地に赴く、
松前家より東蝦夷地の海路を能知得たる者を撰して 松前唐津内町治良兵衛と言(う)者を先導とす、
東地にシリへツ〔ニシベツ〕と言(う)大河に至り
此河は年々龝 [秋] の頃彼岸に至れば 源へ鮭魚夥しく溯るなり、
予其役なれば渠等に命じて同年八月十七日午時より網を下すに鮭三十疋を得たり、
又十八日卯の時に曳きたる網に大に掛りたる中の悪を去り好を撰て九十七束あり、
一束とは二十疋を言(う) 即(ち) 千九百四十疋を得たり、
悪を去るとは勝て大なるを去り中なるを撰て良とす、船積にする故なり、
大船にては凡五万疋以上を積て松前家の定例とする事、古今同じ、
此類の物 日数凡五(〜)七日の中に採たり
此漁業の夥しき故ならずや。
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Bird, Isabella (1831-1904)
Unbeaten Tracks in Japan. 1880
金坂清則 訳注 『完訳 日本奥地紀行3 (北海道・アイヌの世界)』, 平凡社, 2012.
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p.23
蝦夷の漁業にはすばらしいものがあり、[太平洋の]対岸にあるオレゴン[州]沿岸部の漁業に匹敵するが、漁獲高の10〜25パーセントというあまりに重い税がかけられる。
特に重要な魚は鮭かペシユダメールで、ほかに烏賊、昆布と〈海鼠 [なまこ]〉も重要な輸[移]出品になっている。
南岸[太平洋岸]には多くの漁場があるが、最も重要なものは北岸[日本海岸] の石狩にあり、新しい道都である札幌に近い。
ここの鮭漁は日本の見ものの一つになっている。
地引き網には長さが4000フィート[=1200メートル]にもなるものがあり、これだと70人もの人でひかねばならない。
対になった網を日に三回ひくと二万尾もの鮭が獲れることもあり、塩漬けされた一尾の重さは平均で10ポンド[4.5キロ]にもなる。
石狩川の漁場だけで年間五万ドル[五万円]の収益がある。
蝦夷の魚は日本の内地にくまなく搬送されるだけでなく、中国にまで輸出される。
漁業にはこの島[北海道]の先住民であるアイヌが多数雇われているが、漁期には南部や羽後国[秋田県]からたいへんな数の出稼ぎ人が蝦夷に出かけて行く。
p.26
野生動物と猟鳥類は非常に多く、内陸部の人が入り込めない森に生息している。
函館の市場では、雷鳥、野兎、鶉、田鴫、小鴨、鹿、山鴫、真鴨や熊などを、季節季節に手頃な値段で買える。
熊の毛皮と鹿の皮は重要な輸出品の一つでもある。
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