Up 「給与地のおかげ」 作成: 2017-02-13
更新: 2017-02-13


      喜多章明「旧土人保護法とともに五十年」
    『コタンの痕跡──アイヌ人権史の一断面』, 1971, pp.367-436.
    p.370
     ともかく私が大正十一年、帯広コタンに手を着けた当時の実態は以上の如くにして、旧土人の多くは漁夫、和人の農耕夫、日雇人夫等に雇われ、労働賃金を得て、その日その日の生活を送り、給与地はほとんど和人に賃貸されていた。
    それかといって給与地は何のご利益がないという訳ではない。
    給与地を所有するが故に同族水入らずのコタン生活を営むことができたし、給与地を質草として和人から前借もでき、世間の信用の種となった。
    これは保護法のもたらす法益として認容すべきものである。