Up 「土人」の語は,実際どのように使われたか 作成: 2017-02-01
更新: 2017-02-01


    『旧土人保護法』の「旧土人」は,差別語であると思われている。
    和人はアイヌを旧土人と呼んで差別した」というわけである。
    (このときの「差別」の意味は,「蔑視」「薄遇・冷遇」「苛虐・虐待」「迫害」等。)


    「旧土人」の用語の経緯は,はっきりしている:
    それは,明治11年11月4日付本支庁宛の「第二十二号達」である:
      旧蝦夷人ノ儀ハ 戸籍上其他取扱向一般ノ平民同一タル勿論ニ候得共 諸取調者等区別相立候節ノ称呼一定不致候ヨリ 古民或ハ土人旧土人等区々ノ名称ヲ付シ不都合候条 
    自今区別候時ハ 旧土人ト可相称 
    但旧土人ノ増減等 後来ノ調査ニ差支サル様 別ニ取調置へシ

    この文言の中の「土人」「旧土人」に,「差別」の意味合いは無い。


    「土人」は,いつ頃から差別語とされるようになったのか。
    すくなくとも,1960年より前ではない。
    それまでは,「土人」はふつうのことばである。

    終戦直後時期,先鋭的"アイヌ" を引き寄せた『アイヌ新聞』にも, 「土人」の語はふつうに使われている:
      アイヌ新聞, 第7号, 1946-07-01
    アイヌ問題の解決
    和人対土人の "融和" こそ急務
    斗争は大禁物!!
    最近アイヌ土地問題等を中心に旧土人対和人の斗争が表面化し、之が解決方も日本人側官憲に頼むに足らずとしアイヌ側の一部では直接進駐軍へ訴へるものもあり、斯くては民主化への目的に反するものとし、進駐軍も日本官憲に円満な解決を望むものである態度を示してゐる。
    然し乍ら之等アイヌ問題は通称一般社会問題と異る "民族問題" であり、然も従来道庁や裁判所等でも責任ある解決をしたのが余り少なかった為に結局進駐軍へ請願してゐるものである。
    此の際特に北海道庁は等閑視する事なく、絶対責任を以て、現在発生して未解決の侭にあるアイヌ問題を解決すべきであると共に、和人対土人の融和といふ面にも指導の力を注がねば結局道庁の無責任振りを暴露するものであらうと識者は観測してゐる。
    尚アイヌ問題研究所では近く支庁別の「アイヌ会議開催」方を増田道庁長官に訴へる事を決定期待されてゐる。


    実際,「土人」に対するひとの思いは,「思慕」である。
    「思慕」する「土人」に出会えたときの感情は,「畏敬」である。
    これらは,「差別」とは全く逆のものである。

    「アイヌ」に対する思い・感情は,これである。
    かつて,「アイヌ観光」ブームがあった。
    「どの家にもクマの置物・壁飾り」という時代があった。
    どこの世界に,自分が差別している者のグッズをよろこんで飾る者がいる。
    「アイヌ」に対する感情が「好感」であったからこそ,グッズが飾られたのである。