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松宮観山 (1710), p.390
惣じて古き物を何にでも賞翫仕候。
古き膳椀杯の類、はげ候て此方用立不レ申物を、一具にても又はかさ一つにても持参候得ば、代物替に仕候。
気に入候得ば、代物の多少を不レ論何程も出して替候よしの事。
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最上徳内 (1808), p.528
又棚を構て刀、鎧、漆器の類を置、是を寶とす。
みな我か上古製造の物なり。
姦猾の買人贋物を造りてあさむくこと有といへとも、よく見しるものはうくることなし。
古物に擬して作る物は又愛することをしる。
その甚愛重する所の物は深く蔵して猥に人にしめさす。
或は山巓洞穴の裏に埋みかくし、卒然として身死し、妻子も知ことあたはす、朽るものありとそ。
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菅江真澄 (1791), p.582-585
アブタのサカナとて、近きコタンにならびなき家財珍宝もちありしが、近き年物故してあらぬ。
その家に入て見れば、あるじのサカナが、ありし世に持つたへたるたからとおぼへて、こがね、しろがねもてかざりたるつるぎだち、タンネツプ、折敷、貝桶、片口の銚子、ひさげ、杯の皿、こくしら、朱ぬり、梨子地、あるは、こがねの色に巻絵し、しろがねを蛮画にまきたるなど、貴き具ども、なべて、今の世のものともおぼへず。
外なる高庫には、めもあやなるくさぐさの宝多くをさめたれど、おなじコタンのアヰノにても、ことコタンのアヰノにても、ゆくりなうおし来て、あらぬすぢを、たくみにものいひのゝしりて、その、いひけたれたらんものすべなう、そのときツクナヒとて、贖物を、それぞれにいだすの、をそれとて、あるじの女,やもめながらも、さるものゝ嬬とて、家をもりをさめ露あらはさず、宝などふかくひめて、ゆめ、人にしらせじとなん。
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引用・ 参考文献
- 松宮観山 (1710) :『蝦夷談筆記』
- 高倉新一郎編『日本庶民生活史料集成 第4巻』(探検・紀行・地誌. 北辺篇), 三一書房, 1969. pp.387-400.
- 最上徳内 (1808) :『渡島筆記』
高倉新一郎編『日本庶民生活史料集成 第4巻 探検・紀行・地誌 北辺篇』, 三一書房, 1969. pp.521-543
- 菅江真澄 (1791) :『蝦夷迺天布利』
- 『菅江真澄集 第4』(秋田叢書), 秋田叢書刊行会, 1932, pp.493-586.
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