Up 宝物 作成: 2018-11-16
更新: 2019-02-25


      松宮観山 (1710), p.390
    惣じて古き物を何にでも賞翫仕候。
    古き膳椀杯の類、はげ候て此方用立不申物を、一具にても又はかさ一つにても持参候得ば、代物替に仕候。
    気に入候得ば、代物の多少を不論何程も出して替候よしの事。

       最上徳内 (1808), p.528
    又棚を構て刀、鎧、漆器の類を置、是を寶とす。
    みな我か上古製造の物なり
    姦猾の買人贋物を造りてあさむくこと有といへとも、よく見しるものはうくることなし。 古物に擬して作る物は又愛することをしる。
    その甚愛重する所の物は深く蔵して(みだり)に人にしめさす。 或は山(てん)洞穴の裏に埋みかくし、卒然として身死し、妻子も知ことあたはす、朽るものありとそ。

      菅江真澄 (1791), p.582-585
    アブタのサカナとて、近きコタンにならびなき家財珍宝(たから)もちありしが、近き年物故(オヰオマン)してあらぬ。
    その(チセヰ)に入て見れば、あるじのサカナが、ありし世に持つたへたるたからとおぼへて、こがね、しろがねもてかざりたるつるぎだち、タンネツプ、折敷、貝桶、片口の銚子、ひさげ、杯の皿、こくしら、朱ぬり、梨子地、あるは、こがねの色に巻絵し、しろがねを蛮画にまきたるなど、貴き具ども、なべて、今の世のものともおぼへず。
    ()なる高庫には、めもあやなるくさぐさの宝多くをさめたれど、おなじコタンのアヰノにても、ことコタンのアヰノにても、ゆくりなうおし来て、あらぬすぢを、たくみにものいひのゝしりて、その、いひけたれたらんものすべなう、そのときツクナヒとて、贖物(タカラ)を、それぞれにいだすの、をそれとて、あるじの(メノコ),やもめながらも、さるものゝ(つま)とて、家をもりをさめ露あらはさず、宝などふかくひめて、ゆめ、人にしらせじとなん。



    引用・ 参考文献
    • 松宮観山 (1710) :『蝦夷談筆記』
      • 高倉新一郎編『日本庶民生活史料集成 第4巻』(探検・紀行・地誌. 北辺篇), 三一書房, 1969. pp.387-400.
    • 最上徳内 (1808) :『渡島筆記』
        高倉新一郎編『日本庶民生活史料集成 第4巻 探検・紀行・地誌 北辺篇』, 三一書房, 1969. pp.521-543
    • 菅江真澄 (1791) :『蝦夷迺天布利』