Up 「殊勝」 作成: 2019-02-28
更新: 2019-02-28


      平秩東作 (1783), p.427
    蝦夷人は愛憐の心深きものなりといふ。
    しりたるもの蝦夷をやとひ、荷を負せて山を通りしに、磯端に船壹艘波にもまれ危く見ゆる人あり。
    此蝦夷はるかにみて、やがて荷をすてゝ険阻を走下りて綱をなげ、とかくして扶けたり。
    人の難義を助るには其身の勞をいとわず。
    昨今年の飢饉に蝦夷地近き所の民家飢に及所へは、蝦夷来りて鹿を捕て養ひつかわしけり。
    子などありて育てかねたるをば、とかくして、はごく[育]みく[呉]れたるもありといふ。
    常は蝦夷をいとひて追拂様にせしもの、其カによりてたすかりたる者多し。
    誠に殊勝の事なり。


    引用文献
    • 平秩東作 (1783) :『東遊記』
      • 高倉新一郎編『日本庶民生活史料集成 第4巻』(探検・紀行・地誌. 北辺篇), 三一書房, 1969. pp.415-437.