|
高倉新一郎 (1974), p.134
アイヌの通信方法としては、使い走り・のろしのほかにペウタンケ・シロシなどがあった。
ベウタンケとは、異変のあった場合、特殊の声をあげると、近所の者が聞き伝えて次から次へと声をあげて広く急を知らせる方法である。
これを聞くと、一同が声のした方向にかけつけたのである。
シロシとは、かねて約束をしておいた形を作りまたは木に彫刻して、本人がいなくても、それを見た者に意志が伝わる方法である。
たとえば山猟に出たものが宿泊小屋から出かける場合、万一不在中誰かが訪れて来た時のために、箸くらいの細い木の頭を割って、それに細い木を横にはさみ、出かける方向を知らせる。
帰る日の予定は立てた木に日数だけの印をつけておく。
これで留守中訪ねた者は行った方向と予定日数を知ることができたという。
もし死人が出た場合、知らせに行って不在だと、同じものを作って、横木のかわりにぶどう蔓を結びつけておくといったようなことであった。
また毒を塗った仕掛け弓をしかけた沢の入口には、道の両側から若木や草を結び合わせ、道をさえぎっておく。
これを見ると、この先に仕掛け弓のあることを知り避けたのである。
|
|
引用文献
- 高倉新一郎 (1974) :『日本の民俗 1北海道』, 第一法規出版社, 1974
|