Up 汎神 作成: 2017-01-01
更新: 2019-01-15


    アイヌは,存在するものを,神の具現と定める。
    この考え方を,アニミズムという。

    アイヌの場合,神は人の形をしている。
    そして,人と同じ生活をしている。
    家に住み,食べ物を食べ,酒を飲む。

    岩や川や草木や動物は,神の仮の姿である。
    そこで,岩や川や草木や動物と対するときは,神と対するようにしなければならない。
    では,どんなふうに。
    カムイユカルは,この作法を定め,伝承する役割を担う。

    カムイユカル (神謡) の意義・理由は,つぎのものである:
    • 「神」を存在者にする
    • 「神」を捉える仕方を定める
    • 「神」への対し方を定める

    「神」を存在者にする方法は,「神」の物語をつくることである。──これの他はない。
    こうして,神の物語ができる。
    そしてこれが「謡」で語られれば,「神謡」である。

      要点:《神 → 神の物語》ではなく,《神の物語 → 神》である。
         (この順序,よくよく吟味すべし。)


      久保寺逸彦 (1956), pp.118,119
    神謡は、アイヌの信仰・宗教の典拠や、祭神・祭祀の根原・由来を明らかにし、また、日月蝕・海嘯・洪水・飢饉・悪疫等の起因および、これを防止しもしくは免れる方法を説き、あるいは善神と魔神の争闘・征服の跡、善神の人間に対する恩寵・加護・膺懲(ようちょう)等について説くものである。
    神謡にあらわれる神々は、汎神的な信仰を持つアイヌの神々であるから、我々の考えるいわゆる神とは、およそ懸け離れたものである。
    私の採集した神話一四〇篇を見るに、
    雷神・天の神・火の女神・家の守護神・狩猟神・水神・風神・疱瘡神・
      熊・狼・兎・狐・(むじな)川獺(かわうそ)
      蛇・蝮蛇(まむし)蚯蚓(みみず)栗鼠(りす)
      蟬・蜘蛛・螢・
      (しゃち)・鯨・メカジキ・
      梟・鷲・雀・懸巣・郭公鳥・嘴細(はしぼそ)烏・鵜・啄木鳥(きつつき)(しぎ)・鶴・
      舟
    等々が主体の神となり、時には
      魔神や化け物
    のようなものさえ、神として現われている。
    それらの汎神的な神々が自ら身の上を述べ歌うのである。


    引用文献
    • 久保寺逸彦 (1956) :「アイヌ文学序説」, 東京学芸大学研究報告, 第7集別冊, 1956
      • 『アイヌの文学』(岩波新書), 岩波書店, 1977