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久保寺逸彦 (1956), pp.142-144
Oina は,‥‥‥ 北海道南部の胆振・日高地方では、神謡中、特に、
アイヌの始祖として天つ国より下土に降臨して、アイヌ文化の基を開いたと信じられる
Aeoina Kamui (我等の言い継ぎ、語り伝える神=伝承神)
またの名 Ainu-rak-kur (人間臭い神、半神半人の神)、
あるいは Okikurmi, Okikirmui, Okikirma
の自叙になるものを神聖視して、そう呼んでいる。‥‥‥
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しかしながら、北海道の中・東・北部から樺太にかけては、Oina という語を、「神謡 Kamui-yukar」と同義に用いて、内容も形式も、全くこれと等しいものを指している (知里真志保博士『アイヌの歌謡』『アイヌ文学』等参照)。‥‥‥
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人文神アエオイナ・カムイ (オキクルミ) が主体神となって、第一人称叙述の形式をとる点で、一般の神謡と、明瞭に区別される。‥‥‥
「神謡」[Kamui-yukar] が、大小数知れず、各部落に伝承されているのに対して、「聖伝」[Oina] の方は、この語をはっきり他の「神謡」から区別して使う胆振や日高でも、そうたくさんあるものではないらしい。
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引用文献
- 久保寺逸彦 (1956) :「アイヌ文学序説」, 東京学芸大学研究報告, 第7集別冊, 1956
- 『アイヌの文学』(岩波新書), 岩波書店, 1977
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