Up 神々の昔話 作成: 2019-01-16
更新: 2019-01-16


      久保寺逸彦 (1956), pp.185,186
    Kamui-uwepeker (神々の昔話)
    これは神々が自ら自分の身の上を叙ベる昔話で、神話や聖伝から sakehe (折り返しの囃詞) を取りのぞき、口語をもって語れば、そのまま、この物語りの形式となる。
    私の採集したものの中から、(しゃち)の神 Repun-kamui 自叙の昔話の一節を例として示す。
    Repun-kamui an hine an-an ruwe-ne kusu,
    shirka nuye ankor patek an-an,
    tomika nuye
    ankor patek an-an ruwe-neap,
    shine-an-to ta,
    apa chimaka hine inkaran akusu,
    lwa-eyami tono ahun ruwe-ne,
    itak hawe ene-ani,
    Nupuri-kor kamui,
    sake kar hine iyashke-uk an kusu ek-an,
    sekor Iwa-eyami tono hawe-ani,
    aemina rusui kusu,
    itak-an hawe ene-ani ‥‥‥

    「私は沖を守る鯱の神です。
    いつも毎日刀の鞘を彫って暮らしていました。
    すると、或る日のこと、戸が聞いたので、
    見ると、山カケスの殿が入って来て、
    私に、
     『山の神 (熊の神(ヌプリコロ・カムイ)) 様が酒を造ったので、
      あなたを御招待にきたのです』
    といったので、
    私は、おかしくなって、こういってやりました‥‥‥」
    (日高・新平賀、エテノア媼伝承。原文の「コンマ」は、そこまで一口に言った息切れを示す)。


    引用文献
    • 久保寺逸彦 (1956) :「アイヌ文学序説」, 東京学芸大学研究報告, 第7集別冊, 1956
      • 『アイヌの文学』(岩波新書), 岩波書店, 1977