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久保寺逸彦 (1956), pp.185,186
Kamui-uwepeker (神々の昔話)
これは神々が自ら自分の身の上を叙ベる昔話で、神話や聖伝から sakehe (折り返しの囃詞) を取りのぞき、口語をもって語れば、そのまま、この物語りの形式となる。
私の採集したものの中から、鯱の神 Repun-kamui 自叙の昔話の一節を例として示す。
Repun-kamui an hine an-an ruwe-ne kusu,
shirka nuye ankor patek an-an,
tomika nuye
ankor patek an-an ruwe-neap,
shine-an-to ta,
apa chimaka hine inkaran akusu,
lwa-eyami tono ahun ruwe-ne,
itak hawe ene-ani,
Nupuri-kor kamui,
sake kar hine iyashke-uk an kusu ek-an,
sekor Iwa-eyami tono hawe-ani,
aemina rusui kusu,
itak-an hawe ene-ani ‥‥‥
「私は沖を守る鯱の神です。
いつも毎日刀の鞘を彫って暮らしていました。
すると、或る日のこと、戸が聞いたので、
見ると、山カケスの殿が入って来て、
私に、
『山の神 (熊の神) 様が酒を造ったので、
あなたを御招待にきたのです』
といったので、
私は、おかしくなって、こういってやりました‥‥‥」
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(日高・新平賀、エテノア媼伝承。原文の「コンマ」は、そこまで一口に言った息切れを示す)。
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引用文献
- 久保寺逸彦 (1956) :「アイヌ文学序説」, 東京学芸大学研究報告, 第7集別冊, 1956
- 『アイヌの文学』(岩波新書), 岩波書店, 1977
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