Up 川下の者と川上の者の昔話 作成: 2019-01-16
更新: 2019-01-16


      久保寺逸彦 (1956), pp.188
    Panampe-Penampe-uwepeker (川下の者と川上の者の昔話)
    これは、内地の「隣の爺」型の話で、常に「川下の者」が成功し、「川上の者」がそれを羨んで真似して失敗する昔話である。
    内地の「隣の爺」型 (例えば、「花咲爺」の話) や西洋の True and Untrue type では、正直なものが常に最後の勝利を得、不正直なものが、終わりには失敗するが、
    アイヌにおいては、「下の者」の成功する原因は、必ずしも正直さによらず、むしろ、その狡智と抜目なさとにあるようである。
    この説話は、第三人称叙述形式をとり、常に
      Panampe an, penampe an hine shiran
     「川下の者と川上の者とがあったとさ、そうして‥‥‥」
    というように始まり、内容も滑稽なものが多いようであるが、そこに、幾多の教訓が含まれていることも見のがせない。


    引用文献
    • 久保寺逸彦 (1956) :「アイヌ文学序説」, 東京学芸大学研究報告, 第7集別冊, 1956
      • 『アイヌの文学』(岩波新書), 岩波書店, 1977