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久保寺逸彦 (1956), pp.188
Panampe-Penampe-uwepeker (川下の者と川上の者の昔話)
これは、内地の「隣の爺」型の話で、常に「川下の者」が成功し、「川上の者」がそれを羨んで真似して失敗する昔話である。
内地の「隣の爺」型 (例えば、「花咲爺」の話) や西洋の True and Untrue type では、正直なものが常に最後の勝利を得、不正直なものが、終わりには失敗するが、
アイヌにおいては、「下の者」の成功する原因は、必ずしも正直さによらず、むしろ、その狡智と抜目なさとにあるようである。
この説話は、第三人称叙述形式をとり、常に
Panampe an, penampe an hine shiran
「川下の者と川上の者とがあったとさ、そうして‥‥‥」
というように始まり、内容も滑稽なものが多いようであるが、そこに、幾多の教訓が含まれていることも見のがせない。
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引用文献
- 久保寺逸彦 (1956) :「アイヌ文学序説」, 東京学芸大学研究報告, 第7集別冊, 1956
- 『アイヌの文学』(岩波新書), 岩波書店, 1977
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