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金田一 京助 (1931), p.20
昔話はやはり『はなし』であって歌ではない。
律語ではなしに、散文ではある。
ただ実際、炉ばたにそれが実演されている所を聞くと、立派に一つの体をなした語り物であって、ただの『話』ではない。
ただの『話』とは語法も異なった古体を用い、
のみならず、その調子も朗読体であって、『しゃべる』よりは寧ろ単調な一本調子な特殊な調子であり、
態度も普通会話の刻々その語につれて動く表情は全く抑えられていて、客観的な寧ろ無表情の連続であること、さながら名所の案内者が言い馴れた説明を機械的に口演するあの調子がある。
換言すれば、『しゃべる』のと『歌う』のとの間を行っている‥‥‥
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引用文献
- 金田一 京助 (1931) :『ユーカラの研究 第1冊』, 東洋文庫, 1931
- 再版 :『アイヌ叙事詩ユーカラの研究 1』, 東洋文庫, 1967
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