Up 踊り歌 Rimse-shinotcha 作成: 2019-01-14
更新: 2019-01-14


      久保寺逸彦 (1956), p.55
    Rimse の原義は、「リムリムとなり響く音を立てる」、「ズシンズシンと音を立てる」ということで、「踊る」という動詞にも、またその踊りに伴なう歌をさしてもいう語である。
    日高・沙流地方では、Rimse の代わりに Horippa というが、この原義は、「尻を何度も上げる」ということで、やはり「踊る」とか「舞踊」を意味する。
    この Rimse, Horippa は、次に述べる Sake-hau「酒謡」に伴なう tapkar「踏舞」が、主として、一人の男子によって行われるのに対して、女を主とするもので、それに男子の混じることもあって、円陣をつくり、左まわりに足を運ばせながら、さまざまの姿態をなして踊るものである。‥‥‥
    かかる舞踊は、祭りの際に行われるのが本体であるから、
    男女とも刺繍衣(チカラカラペ)に盛装し、
    女子は chipanup (礼装用の鉢巻) を額にしめ、頸に玉飾り tama-sai、耳に耳環 ninkari をさげ、
    男子は頭に sapaunpe (柳の削り掛けで作った礼冠) を戴き、太刀を佩き、右手に刀を抜き持って
    これに加わるのが普通である (ただし、足は素足である)。

      同上, pp.56,67
    かかる舞踊に伴なう歌謡 Rimse-shinotcha というものは、
     (1) ‥‥‥ 無意味な音群を繰り返すもの、
     (2) ‥‥‥ 無意味の音群の中に詞を挿むもの、‥‥‥
     (3) 祭りの歌 Upopo を歌詞とするもの、
    ‥‥‥ がある。


    引用文献
    • 久保寺逸彦 (1956) :「アイヌ文学序説」, 東京学芸大学研究報告, 第7集別冊, 1956
      • 『アイヌの文学』(岩波新書), 岩波書店, 1977