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久保寺逸彦 (1956), pp.58,59
Sake-hau は原義「酒の声」。
これをまた Chikup-hau「酒の声」、Iku-hau「酒宴の声」、Tonoto- shinotcha「酒の歌」ともいうが、男子が踏舞 tapkar する際に発する、特有な調子を帯びた捻り声ともいうべきものである。‥‥‥
酒謡は、祭祀の折り、酒宴もようやく歓たけなわな頃、長老たちが、頭には礼冠 sapaunpe (柳の削り掛けを綯って作る) を戴き、太刀を佩いた姿で、こもごも起き上がり、両手を左右に伸ばし、掌を上向けにし、肘は少し曲げ、それを静かに上下しつつ、両脚を開いて、床の上を一歩一歩力強く踏みつけて、斜め横の方へ五、六歩行っては引き返して、また同一の動作を繰り返して踏舞する時に発する声なのである。‥‥‥
男子が踏舞する際、時としては、その背後に、一人あるいは二人の婦人が起ち、手を拍って踊り跳ねながら、これに調子を合わせて、ときどき「auchō」とか「auho」「auhoi」などいう叫び声を挙げて、酒謡に和する。
婦人が男子の踏舞を助けてともに踏舞することを、i-e-tapkar (それに連れて踏舞する)、u-e-tapkar (相連れて踏舞する) という。
酒謡は普通、単なる無意味の音群の発声である。
中には、歌詞を交じえるものもある ‥‥‥
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