Up アイヌの数量表現 作成: 2019-02-09
更新: 2019-02-09


      串原正峯 (1793), p.514
    夷、貸付差引勘定の時、假令(ば)鯡七束七連といふ事を、
    へロキ  [鯡]
    アルワン [七]
    テシ   [連]
    イカシマ [+]
    アルワン [七]
    シケ   [束]
    といふなり。
    へロキは鯡、
    アルワンは七、
    テシは連なり、
    イカシマは其上にてといふ事、
    アルワン・シケ
    は七束なり。
    右のことくアルワン・テシ・イカシマ・アルワン・シケと通辭其夷に云聞るに、其夷は
    アルワン [七]
    テシ   [連]
    エ    [一つ引]
    ツベサン [八]
    シケ   [束]
    なりといふ。
    是も譯すれば
    アルワン・テシは七連、
    ヱ・ツベサン・シケは八束の内一束引といふにて、ツベサンシケは八束なり。
    上にヱと付ていふ時は、一つ引といふ事、則ち七束なり。
    ヶ様に七束七連をいひ様によりていろ/\にいふ事なり。
    其夷通辭が言をとくと聞請ず、自分の思ふ所をいふゆへ、矢張同じ數なれとも違ひたる様に脇よりは見ゆるなり。
    其夷と並びて居たる夷は脇に居て早く呑込居たるゆへ、側より其夷にいふには、此方のいふのも親方のいふも同じ数なりといふて笑ひたり。
    かくいわれて考付たるや、成程左様なりと呑込たり。
    右七束七連を夷言にいふ時は四通りに云るゝなり。
    左のごとし。
    蝦言に連をテシといふ、束をシケと云。
    都て端したの小敷より先へいふなり。
    [七連 其上に 七束 = 七束七連]
    アルワン 七
    テシ   連
    イカシマ 其上に
    アルワン 七
    シケ   束
    [七連 (一つ引・八)束 = 七束七連]
    アルワン 七
    テシ   連
    ヱ    一つ引
    ツベサン 八
    シケ   束
    [八束 なき 三連 = 七束七連]
    レ    三
    テシ   連
    ヘナキ  なき
    ツベサン 八
    シケ   束
    [(二 其上に 小)連 (一つ引・八)束 = 七束七連]
    ツ    二
    テシ   連
    イカシマ 其上に
    ホン   小
    シケ   束五連の事
    ア[ヱ] [一つ引]
    ツベサン 八
    シケ   束


    引用文献
    • 串原正峯 (1793) :『夷諺俗話』
      • 高倉新一郎編『日本庶民生活史料集成 第4巻 探検・紀行・地誌 北辺篇』, 三一書房, 1969. pp.485-520.