Up 現前の "アイヌ" 史概説では,最上 作成: 2017-01-15
更新: 2017-01-15


    "アイヌ"史は,勉強になる。
    これの勉強は,「系の構造・ダイナミクス・遷移」のすぐれた勉強になる。
    "アイヌ"史は,150年に満たない期間の歴史であるのに,系のダイナミクスの妙が何度も現れる。

    しかし,「アイヌ学者」の "アイヌ"史の相場は,「アイヌ悲哀史」である。
    「悲哀」を書き綴る──これは,ルポルタージュである。
    科学は,ルポルタージュとは違う。

    "アイヌ"史を「系の構造・ダイナミクス・遷移」として論述している者は,「アイヌ学者」では河野本道だけである。
    その書は,『アイヌ史/概説』である。

    『アイヌ史/概説』は,概論である。
    概論は,「系の構造・ダイナミクス」の論述である。
    概論を書くのは,能力が要る。──経験に伴って成長する能力であるだけ,なおさらである。 (翻って,重箱の隅を突っつくような論を書くのに,能力は要らない。)

    "アイヌ" 史を学者が書いたもののうちでは,『アイヌ史/概説』がこれまででは最上である。
    しかし,良いものは,流通しない。
    どうしても,内容が難しくなるからである。
    流通するのは,読者の思考回路に合ったものである。

    同じ理由で,<事実>の話は流通しない。
    流通させようとするなら,<嘘>の話をつくることになる。
    "アイヌ" 史だと,「アイヌ=善玉・和人=悪玉」「アイヌ民族」の話である。

    確信犯的に虚偽をやるなら,まだよい。
    問題は,「アイヌ学者」のうちでも,「アイヌ=善玉・和人=悪玉」「アイヌ民族」がアタリマエになっていることである。