Up 「観光立国」政策──オリンピックとアイヌ 作成: 2020-01-25
更新: 2020-01-26


      読売新聞, 2020-01-25
    「日本の美 触れる機会」
    首相,参院代表質問で
     安倍首相は24日の参院本会議での代表質問で、政府が東京五輪・パラリンピックに合わせて開く文化芸術の祭典「日本博」を通じ、日本文化の国内外への発信を強化する方針を示した。
     首相は「我が国が誇る縄文時代から現代まで続く『日本の美』に触れていただく機会を本格的に設け、地域文化の活性化に取り組んでいく」と述べた。 具体例として、アイヌ民族の伝統音楽や食文化、琉球舞踊を挙げた。
     自民党の野上浩太郎参院幹事長代行と公明党の山口代表の質問に答えた。
     野上氏は質問で「これまで以上に日本博の広報戦略に力を入れてもらいたい」と要望した。 山口氏は「日本の宝である文化財を後世に継承できるよう対策に万全を期すべきだ」と求めた。


    金メダルの個数は,生活者にはどうでもよいことである。
    これに躍起になるのは,政治・経済の世界である。
    なぜなら,そこは「金メダル1個あたりの経済効果」を計算するところだからである。

    商品経済は,物事を交換価値にする。
    「経済効果」で考える
    商品経済において,「アイヌ」はオリンピックと同類になる。


    世代は忘却し,同じ事の繰り返しをやる。
    温故知新 :
      荒井源次郎 (1984), p.217
    アイヌ侮辱の業者ポスター
     アイヌに関連した事件が相次ぎ、一般的にも論議を呼んでいるのをよそに、東京・新宿の百貨店で十月十八日から三十日までの期間、函館市物産協会主催で「北海道うまいもの大会」を開催中、店内外に掲示したポスターにアイヌのしゅう長がサケをもち、過去にも見られないアイヌ図柄を使って宣伝に努めていた。
     これをたまたま上京中の道ウタリ協会の代表者たちが発見、早速、同店を訪れ、抗議した。 「ポスターに描かれているようなアイヌ風俗は昔も今も存在しない。 全くでたらめな宣伝で錯誤もはなはだしい」とその撤去方を強く要求した。 これに対し、主催者側責任者名で陳謝文を手交、その場で使用中の約百枚のポスターを撤去した。
     道内外で、この種の和人業者はアイヌ像を利用、アイヌを売りものにしているやからが多い。 野放しにしていたらどんなことになるか、嘆かわしいことだ。 こんなことではいつまでたってもアイヌは誤った認識で見られ、相互の理解を深めるに大きな障害を来すことは自明の理だ。
     このような心ない和人業者によってアイヌが侮辱され、差別されるのは人道上の重大問題であって、断じて許せない。今後この種の業者の反省と自粛を強く望む。
    〈北海道新聞 昭和四十九 [1974] 年十一月十三日〉

      同上, p.102
     北海道を訪れる観光客はきまって観光アイヌ地を訪れる。 そこには見世物的自称酋長と古風なアイヌの家屋が見られる。 今日では市町村までがこれらの偽酋長をしていわゆる官製観光アイヌというか、広く宣伝に利用しその利益を得ているのが実状で、自称酋長の勢力にますます拍車をかけている。
    もちろん偽酋長これに追従する観光アイヌたちにしても、所詮生きんがために選んだ職業に外ならないが、しかしこうした一部ウタリ (同族) の所業から多くのウタリは著しく迷惑を蒙っていることから、利害の相反するウタリの両者が相反目しいざこざが起きるのは当然なことである。
    しかも北海道の紹介や観光案内のパンフレットを見ると、アイヌを侮辱的偏見だらけの紹介が多い。 これもやはり観光客誘致の業者宣伝でアイヌを利用しているに過ぎない。 現に道内外にこの種の業者がアイヌを利用アイヌを売りものにしている。
    こんな輩を野放しにしていたらどんなことになるか嘆かわしいことである。‥‥‥
    〈『北風林』第八号 昭和五十五 [1980] 年八月二十日〉


    引用文献
    • 荒井源次郎 (1984) :『アイヌの叫び』, 北海道出版企画センター , 1984