Up アイヌ予算の私物化 作成: 2016-12-30
更新: 2016-12-30


     asahi.com 2006-08-12
      (http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200608120394.html)
     
    アイヌの遺産「金成マツノート」の翻訳打ち切りへ
    2006年08月12日23時04分

     アイヌ民族の英雄叙事詩・ユーカラが大量に書き残され、貴重な遺産とされる「金成(かんなり)マツノート」の翻訳が打ち切りの危機にある。言語学者の故・金田一京助氏と5月に亡くなった萱野茂氏が約40年間に33話を訳した。さらに49話が残っているが、事業を続けてきた北海道は「一定の成果が出た」として、文化庁などに07年度で終了する意思を伝えている。

     ユーカラは、アイヌ民族の間で口頭で語り継がれてきた。英雄ポンヤウンぺが神様と闘ったり、死んだ恋人を生き返らせたりする物語。

     昭和初期、キリスト教伝道学校で英語教育を受けた登別市の金成マツさん(1875〜1961)が、文字を持たないアイヌの言葉をローマ字表記で約100冊のノートに書きつづった。92の話(10話は行方不明)のうち、金田一氏が9話を訳し、萱野氏は79年から道教委の委託で翻訳作業を続けてきた。その成果は「ユーカラ集」として刊行され、大学や図書館に配布された。アイヌ語は明治政府以降の同化政策の中で失われ、最近は保存の重要性が見直されつつあるが、自由に使えるのは萱野氏ら数人に限られていた。

     文化庁は「金成マツノート」の翻訳に民俗文化財調査費から28年間、年に数百万円を支出してきた。今年度予算は1500万円のうち、半額を翻訳に助成。同予算は各地の文化財の調査にも使われる。

     これまでのペースでは、全訳するのに50年程度かかりかねない。文化庁は、「一つの事業がこれだけ続いてきたことは異例」であり、特定の地域だけ特別扱いはできないという。これをうけ、北海道は30年目を迎える07年度で終了する方針を関係団体に伝えた。

     道教委は「全訳しないといけないとは思うが、一度、区切りを付け、何らかの別の展開を考えたい」としている。

     樺太アイヌ語学研究者の村崎恭子・元横浜国立大学教授は「金成マツノートは、日本語でいえば大和朝廷の古事記にあたる物語で、大切な遺産。アイヌ民族の歴史認識が伝えられており、全訳されることで資料としての価値が高まる」と話している。


     「 28年間、年に数百万円を支出してきた。今年度予算は1500万円のうち、半額を翻訳に助成。‥‥‥ これまでのペースでは、全訳するのに50年程度かかりかねない。」
     「 92の話(10話は行方不明)のうち、金田一氏が9話を訳し」
    であるから,つぎのペースの翻訳作業である:
        ( 92 − 9 ) ÷ ( 28 + 50 ) = 1.06 話/年
    つまり,つぎのようになる:
        1話の翻訳料 = 数百万円

    そしてこの「年に数百万円」が,「私物化」だったというわけである:
      「自由に使えるのは萱野氏ら数人に限られていた」


    事業中止は,萱野茂死亡のタイミングで,決められている。
    翻って,この事業は,萱野茂が存命のうちは続けられる性質のものだったというわけである。

    事業は,実態を明かしてしまえば,「デタラメ」となる。
    この「デタラメ」は,釈明の余地のないものになる。
    しかし,「利権"アイヌ"」のテーマのもと,ここで主題化することになるのは,「萱野茂の資質」というものではない。
    主題化することになるのは,つぎの命題である:
      《もともと,これが「アイヌ予算」の風土である。
       ──萱野茂はこの風土に順ったに過ぎない。》


    利権は,風土である。
    利権は,これを指摘されれば,明らかに「デタラメ」となるものである。
    しかし,その風土に順ってきた者にとっては,「デタラメ」の指摘はいつも「いまさら」というふうにやって来る。
    「手のひらを返される」というふうにやって来る:
      以心伝心の間柄と思っていたのに‥‥‥
      このようなことはほかでも‥‥‥
      別の用途に使っているといっても,経費の有効活用なんだから‥‥‥

    「利権」の主題化は,「悪者」の主題化ではない。
    「利権」の主題化は,「風土」の主題化である。
    利権は,生態系である。
    利権は,生態系の意味で,「風土」である。
    生態系の中の生物に悪者は存在しないように,利権の中にいる者に悪者は存在しない。

    要諦: 利権に悪者は存在しない。