Up 額平川筋アイヌの雇用状況 作成: 2019-01-30
更新: 2019-01-30


    松浦武四郎 (1858) の中の人別改を統計すると,132人のうち44人が雇いに出ている。
    また,雇いのうち3人を「アツケシえ」と特記している。
    以下,この内容。


    沙流川に額平川が合流する地点から,額平川を溯る。
    人家は,ヌツケベツ村 (額平川から貫気別川が別れる地点の手前) が最後になる。


      松浦武四郎 (1858), pp.16-
      シケレへ
    ‥‥‥
    また人家六軒有
    家主クシコ 五十八才、 ‥‥‥ 等家内七人にて暮し、
    其内倅と弟と二人は一雇に取られたりとかや。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内三人にて暮しけるが、
    其若者弐人とも雇に下られ、家は爺のみ残りたり。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内五人にて暮し、
    其内倅は雇に下られたり。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内三人にて暮しぬるが、
    其家主は雇に下られたり。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内三人にて暮し、
    其家主は雇に下られ、家には妻と子供のみ残りぬ。
    また其隣 ‥‥‥ 家内九人にて暮しけるが、
    其内兄弟二人は雇にとられ、家にはまだ幼きもののみ残りぬ。
    扨また川すじまゝ上るに、両岸平地多く、畑多し。
    地味如何にもよろしく開ける地也。
    爰にては少しも蝦夷の趣は無なり。
    ‥‥‥
      ニヨイ
    ‥‥‥
    人家五軒有。
    家主カンヌムク 五十二才、‥‥‥ 等家内三人にて暮し、
    其内養子は雇に下り有る也。
    其また隣 家主ハルアン 六十七才
    倅ハウヱアンベ 三十二才 此者跛にて稼出来がたし、よって二人にて暮しぬ。
    また其隣‥‥‥ 等家内八人にて暮し、
    其内家主と娘と弟と三人雇に下られたり。
    また其隣‥‥‥ 等家内二人にて暮しけるよし。
    また其隣に‥‥‥ と両人にて暮したり。
    ‥‥‥
    扨また此処
    川の北岸弐丁計も行、六七十間の坂を上る哉、人家九軒有。
    其処
    乙名イトリカンケ 五十才家え入休む。
    ‥‥‥ 等家内六人にて暮し、
    其内家には夫婦のみ残り若者四人共に雇に下られ居たり。
    また其隣‥‥‥ 等家内二人にて暮しぬ。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内六人にて暮し、
    其内家主夫婦のみ残りて四人雇に下りたり。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内三人にて暮し、
    また其隣 ‥‥‥ 等家内五人にて暮しぬが、
    また其内夫婦は雇に下られたりとかや。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内五人にて暮し、
    其内倅は雇に下られたりと。
    また其隣 家主はシ子チラン女の子、此者我が召連来りしリキナンコロの妾のよし也 二十九才。 倅イカヌクル八才、妹一人三才 と三人にて暮しぬ。
    また其隣 ‥‥‥ 等五人にて暮しぬ。
    其内倅は雇に下られ有りぬ。
    また其隣 ‥‥‥ 家内六人にて暮しけるが、
    此内家には母と末弟と二人残りて若者四人にて雇に下られたり。
    此辺畑多し。
     ‥‥‥
      ヌツケベツ村
    南岸岡の下に一条の市町に成、‥‥‥
    人家十軒。
    余は六月廿九日モンヘツより昼頃に此処え下り越来りて、当所乙名シリウエンカ 六十八才 家にて止宿したり。
    ‥‥‥ 等家内五人にて暮したりけるが、
    其倅は当年アツケシに居也。
    余が逢ふによく山中の事を教え呉たり。
    其嫁も浜に雇をなしたり。
    また案内に召連来りし家主アムキアイノ 二十三才
    是も此乙名の子供なりと。
    妻、シユツカベ 二十一才
    と二人暮しけるが、
    アムキリは雇に下り居り、
    また其隣 ‥‥‥ 等家内四人にて暮し
    また其隣 ‥‥‥ 等家内四人にて暮す。
    此シロマアンも乙名の子供なりけるが雇に当年アツケシえ遣られたり。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内五人にて暮しけるが、
    其内倅は雇に下られ有たり。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内七人にて暮し、
    其内倅と娘は雇に下られたり。
    またしばし過て
    家主サチユウ 五十四才、 ‥‥‥ 等家内七人にて暮しぬ。
    其内倅夫婦と弟と三人雇に下られたりと。
    また其隣 ‥‥‥ 二人にて暮しけるが、
    其倅はアツケシえ遣られたり。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内六人にて暮しけるが、
    倅も嫁も弟も雇に下られ、夫婦に末弟のみ残りぬ。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内両人にて暮しけるとかや等。


    引用文献
    • 松浦武四郎 (1858) :『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌』「戊午第四十一巻 東部 沙留誌 参」
      • 高倉新一郎[校訂], 秋葉実[解読]『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 下巻』, 北海道出版企画センター, 1985. pp.11-45.