Up 沙流川筋アイヌの雇用状況──ヘテウコリから上流 作成: 2019-01-31
更新: 2019-01-31


    松浦武四郎 (1858) の中の人別改を統計すると,132人のうち43人が雇いに出ている。
    また,雇いのうち2人を「アツケシえ」と特記している。
    以下,この内容。



      松浦武四郎 (1858), pp.53,54
      ベンケトサ
      ホマヲナイ
    ‥‥‥
    扨此川口相応の広場有て、其処に人家七軒有。
    当村の乙名ラシリコウエン 六十三才 家えよる。
    ‥‥‥ 家内六人にて暮しぬ、
    其倅はアツケシへ行たり。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内五人にて暮し、
    其内家には爺一人、残りは家内四人にて雇に下られたり。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内五人にて暮し、
    家には老人夫婦のみ残り、三人は雇に下られ有るよし也。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内四人にて暮し、
    其内倅は雇に下られたりと。
    また其隣 ‥‥‥ 家内四人にて暮し、
    家主は雇に下られ居るよし。
    また其隣
    家主モンシラツテ 六十才
    妻イクベラン 五十四才
    此家え寄て休みけるに、隠元・さゝげ等出し馳走を致しぬ。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内四人にて暮し
    其娘は雇に下られたり。
    ‥‥‥
    扨此村も少し高きによって水患なし。
    然し此間の洪水に畑は半分計も流したりと。

      同上, pp.56-63
      ソウホコマナイ
    ‥‥‥
    扨此辺に来るや両岸よくひらけ、針位寅卯((東の方))に向ひてホロサル村を向に見る也。
    しばし過て
      モルベシベ
    ‥‥‥ 此辺ホロサル村の畑多し。
    ‥‥‥
      ヒラチンナイ
    ‥‥‥ 此処畑多し。
    ‥‥‥
    扨此処より向岸え川船にてわたり、原道三丁計過坂を上りてまた弐三軒人家を過、又坂を上り
      ホロサル村
    に到る。
    此処地形南東向一段高く、うしろに山をうけ、其下川有て、川の向ふヒラチンナイ、奥はムセウの方に(ま)で目わたし、南の方ヲサツナイまで一目に見、実に蝦夷第一の開け場所也。
    地味至て沃にして、粟・稗・菜・大根・眉豆(いんげん)・ニイシヤク豆と云て手なしさゝげ・胡瓜・姻草・蕪・呱吧芋(じゃがいも)・南瓜等を作りたり。
    ‥‥‥ 是サル場所の根元と云伝えたり。
    人家二十三軒
    脇乙名シユクンナは、御目見に附箱館え行留主なれば、余はリキナンコロの家え止宿す。
    先此人別には当場所
    脇乙名シユクンナ 四十四才
    妻クラハモン 五十才
    倅イタキセン子 弐十四才
    嫁アンヒリカ
    等四人にて暮すに、
    其倅は雇に下られ居るよし也。
    此家場所第一番の大家にて凡十間四方も有、家には行器(ほかい)を凡六七十、太刀の百振も懸たり。
    前に蔵有。
    年々雑穀凡三十余俵ヅゝとるといへり。
    又此村に到りて雪隠を見たり。
    是夷家の雪隠といへるものは、高く櫓の如く木を積、其上に到りて居るに、此村の雪隠は和人の立方とも同様、四面によし簾にて頗る叮嚀に成し居たり。
    其隣 ‥‥‥ 等家内四人にて暮しぬ。
    其内娘と弟と両人雇に下られたり。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内弐人にて暮したり。
    また其隣 ‥‥‥ 家内二人なりけるが、
    其家主は一人(淋)敷病にて寝り居たりとかや。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内四人にて暮し、
    また其内倅夫婦は雇に下られたりと。
    其隣 ‥‥‥ 等家内六人にて暮し、
    其内シアマクルは雇に下られ居るとかや。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内八人にて暮し、
    其内倅妹弟聟と四人は雇に下られたりとかや。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内四人にて暮し、
    其内倅は雇に下られ有りとかや。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内三人にて暮したり。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内五人にて暮しけるに、
    其内倅は雇に下られたりとかや。
    また其隣 ‥‥‥ と家内三人にて暮し、
    其内弟は雇に下られたりとかや。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内五人にて暮しける也。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内六人にて暮し、
    其内家主は雇に下られたり。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内七人にて暮しぬ。 其内倅夫婦と弟と三人は雇に下られたりとかや。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内三人にて暮し、
    其内家主は雇に下られ居たりとかや。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内四人にて暮し、
    其内倅夫婦は雇に下られ、家には婆と子供のみ残し有る也。
    また其隣 ‥‥‥ 家内五人にて暮し、
    其家主は雇に下られ居るよし也。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内三人にて暮す。
    また其内アンベウクは雇に下られたりと。
    また其隣 ‥‥‥ 家内二人にて
    雇に下られたり。
    また其隣 ‥‥‥ 等家内弐人にて暮しぬ。
    また其倅は雇に下られたりと。
    其隣 ‥‥‥ 等家内四人にて暮し、
    其内家主は雇に下られたり。
    また其隣 ‥‥‥ 家内三人にて暮し、
    其聟は雇に下られ居るとかや。
    其隣我が召連行しと云は、家主リキナンコ口 五十一才
    妻ウクルシユエ 三十八才 等家内弐人にて暮しけるが、
    是も家に行器の弐十五六も有、太刀も十振も懸、槍も具足も所持せり。
    至極此村は外とは違たる様にぞ覚ぬ。
    余此家にて止宿したり。


    引用文献
    • 松浦武四郎『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌』「戊午第四十二巻 東部 沙留誌 肆」
      • 高倉新一郎[校訂], 秋葉実[解読]『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 下巻』, 北海道出版企画センター, 1985, pp.47-83.