Up 日本民族学会「見解」 作成: 2017-03-06
更新: 2017-03-07


    アイヌ学は,実は,終焉している。
    即ち,アイヌ学は,学会のつぎの「見解」を以て,終焉した:
      「アイヌ研究に関する日本民族学会研究倫理委員会の見解」
    『民俗學研究』(日本民族学会), 54(1), 1989.
     少数民族の調査研究に際して民族学者, 文化人類学者が直面する倫理的諸問題を検討するため, 日本民族学会理事会は1988年11月, 研究倫理委員会を発足させたが, この委員会は数度にわたる慎重な審議をふまえて, このほどまずアイヌ研究についての見解を次のようにまとめた。

     1. 民族学, 文化人類学の分野における, 基本的な概念のひとつは「民族」である。この「民族」の規定にあたっては, 言語, 習俗,慣習その他の文化的伝統に加えて, 人びとの主体的な帰属意識の存在が重要な要件であり, この意識が人びとの間に存在するとき,この人びとは独立した民族とみなされる。アイヌの人びとの場合も, 主体的な帰属意識がある限りにおいて, 独自の民族として認識されなければならない
     アイヌ民族がこれまでに形成発展させてきた民族文化も, この観点から十分に尊重されなければならない。また一般的に, 民族文化は常に変化するという基本的特質を持つが, 特に明治以降大きな変貌を強いられたアイヌ民族文化が, あたかも滅びゆく文化であるかのようにしばしば誤解されてきたことは,民族文化への基本認識の誤りにもとづくものであった

     2. 民族学者, 文化人類学者によって行われてきたアイヌ民族文化の研究も,その例外ではなかった。これまでの研究はアイヌ民族の意志や希望の反映という点においても, アイヌ民族への研究成果の還元においても,極めて不十分であったと言わねばならない。こうした反省の上に立てば, 今後のアイヌ研究の発展のために不可欠なのは, アイヌ民族とその文化に対する正しい理解の確立と, 相互の十分な意志疎通を実現し得る研究体制の確立である。そのためには, まずアイヌ民族出身の専門研究者の育成と, その参加による共同研究が必要であり, またこれを実現するための公的研究・教育機関の設立が急務である。

     3. こうして得られた研究の成果は,教育・啓蒙の側面においても積極的に活用されるべきである。すなわち, 抑圧を強いられてきたアイヌ民族の歴史とその文化について,学校教育, 社会教育等を通じて正しい理解をたかめ, 日本社会に今なお根強く残るアイヌ民族に対する誤解や偏見を一掃するため, あらゆる努力がはらわれなければならない。この目的のためには, 初等・中等教育における教科書の内容についても十分に検討する必要がある。一方, アイヌ民族の幼いメンバーや若い世代に対して, アイヌの伝統文化とアイヌ語を学習する機会が制度的に保証されなければならないとわれわれは考える。

     4. アイヌ民族に対するこうした正しい理解の促進は, 現在さかんに強調されている国際理解教育の第一歩でもある。独自の文化と独自の帰属意識を持つアイヌ民族が日本のなかに存在することを正しく理解することなしに, 国際化時代の異文化理解は到底達成し得ないことを認識する必要がある。アイヌ民族に対する正しい理解を出発点としてこそ, 他の少数民族や差別の問題についても公正な認識を持ち, 他の文化や社会についての理解を深めることができるのである。

     5. 以上の見解は, 文化や社会の研究と教育に携わっているわれわれ民族学者, 文化人類学者の研究倫理から発したものである。今日, 日本のみならず,世界のいずれの地においても,一方的な研究至上主は通用しない。われわれの研究活動も,ひとつの社会的行為であることを肝に銘ずべきである。今回のアイヌ民族に関するわれわれの見解の表明は, こうした社会的責任の自覚にもとづくものに他ならない。

     1989年 6月1日 (木〕
     日本民族学会研究倫理委員会
     委員長  祖父江孝男      (放送大学)
     委 員  伊藤 亜人      (東京大学)
          上野 和男      (国立歴史民俗博物館)
          大塚 和義      (国立民族学博物館)
          岡田 宏明      (北海道大学)
          小谷 凱宣      (名古屋大学)
          小西 正捷      (立教大学)
          スチュアート ヘンリ (目白女子短期大学)
          田中真砂子      (お茶の水女子大学)
          丸山 孝一      (九州大学)
          山下 晋司      (東京大学)

    この「見解」を以てアイヌ学は終焉したというのは,この「見解」は民族派"アイヌ" への降伏を命じているからである。

    実際,これまでアイヌ学の重鎮的立場にいた者は,「アイヌ民族」の概念を退け,「アイヌ文化」を終焉しているとする者であるから,みな「アイヌ学者失格」である。
    高倉新一郎などは,A級戦犯の最高失格者ということになる。
    つまりは,学会が,毛沢東中国の文化大革命のようなことになったわけである。


    翻って,「見解」を作成した日本民族学会研究倫理委員会のメンバーは,この「見解」の内容では自分が困ることにならない者である。
    また,今日「アイヌ学者」である者は,つぎのいずれかである:
    1. 「見解」の内容で自分が困ることにはならない「アイヌ学者」
    2. 「見解」が決めた方向ともともと相和的であった「アイヌ学者」 ──即ち,民族派"アイヌ" シンパの「アイヌ学者」