Up | 不適応を択る | 作成: 2016-06-07 更新: 2016-06-07 |
この変化に,アイヌは翻弄される。 生きていくためには変化に適応するしかないが,当然のこと,うまくいかない。 うまくいかず,苦労する。 実際,環境の変化への適応は難事である。 きつくてあたりまえであり,うまくいかなくてあたりまえである。 環境の変化に対し,適応を択る個と択らない個の別が現れる。 適応を択るのは,従来型にまだ深く染まっていない個である。 従来型に深く染まっているとは,適応を択らない──不適応を択る──ということである。 特に,適応・不適応は是非のはなしではない。 実際,系の遷移は個・種の新陳代謝であるが,新陳代謝は,適応の一方で不適応があるから成っているわけである。
「不適応を択る」には,「矜恃」という面もある。 これまでの生き方に対する矜恃である。 これまでの自分の生き方は,自分のアイデンティティーである。 これを変えることは,自分のアイデンティティーを無くしてしまうことである。 自分のアイデンティティーを保つ構えが,「矜恃」である。 こうして,矜恃は不適応を択ぶ。 個が不適応を択るとき,その不適応は必然である。 不適応は, 「現成」("No more than this") である。 「不適応も適応のうち」というわけである。 |