Up 「族」 作成: 2020-05-25
更新: 2020-05-25


    「系統」は,「同じ系統の個の集団」の「系統」である。
    そして,「同じ系統の個の集団」を一語に縮めたのが,「族」である。

    族は,共通の先祖──「祖」──の存在を以て立つ。
    しかし,現実の集団から出発して祖を導くのは,できないことである。
    即ち,祖が存在するように祖を定立することは,できない。
    ひとは,離合集散するものだからである。

    族の祖は,神話の中に措かれる。
    族には必ず神話があるが,族の祖を立てる必要が神話をつくらせるのである。


    アイヌが自身を「族」として現すときの彼らの祖は,こうなる。
    アイヌは,故人を先祖にすることはなかった。
    故人の名は遺さない。
    実際,故人を先祖にするのは,先祖数の爆発となり,もとより不可能なことなのである:

      つぎが,自分から出発した<父・母>の溯行図:
      世代−n は,2n の個体数になる。
      そこで,世代−n までの先祖総数は, \[ \hspace{10pt} 2^1 + \ \cdots \ + 2^n \] これは,つぎのように求められる: \[ 2^1 + \ \cdots \ + 2^n = 2^1 + 2 (2^1 + \ \cdots \ + 2^n) - 2^{n+1} \\ \Rightarrow \ 2^1 + \ \cdots \ + 2^n = 2^{n+1} - 2 \]
      計算してみると:
          世代-1 まで  2
          世代-2 まで  6
          世代-3 まで  14
          世代-4 まで  30
          世代-5 まで  62
          世代-6 まで  126
          世代-7 まで  254
          ‥‥‥‥

    現前の自称アイヌ── "アイヌ" ──は故人を先祖にするが,これは和式に同化したものである。
    檀家制は男系を用いる。 この場合,先祖の世代が下ることは,先祖が一人加わるだけである。
    先祖数爆発問題の解決というわけだ。