Up 「制度・政権のせい」思考回路 作成: 2017-02-25
更新: 2017-02-25


      海馬沢博「医療制度と労働賃金について」
    『北海道アイヌ中国訪問団記』,1974, pp.48-55.
    pp.48-49
     中国の歴史には民族的な抑圧制度が長期にわたって存在し、各民族の地位は平等でなかった。 漢族出身の支配者は少数民族を民族ぐるみで抑圧・搾取し、奴れい扱いをしました。 従って中国の少数民族は二重にも三重にも抑圧され搾取されていたのです。
     このような長い歴史のある中国が中華人民共和国の誕生によって民族的な抑圧制度 (封建制度・奴れい制度等) は徹底的にとり除かれ、各民族間の平等と団結が実現し国家事務の管理と決定に参与し社会主義経済建設に努力するようになった。
    又、少数民族は中国の国籍を持ち、その中で少数民族としての民族歴史は尊重され、習慣・風俗・宗教・言語・文字等すべてについても尊重されており、自由が保障されています。
     ‥‥‥
    僅か二五年で五四の民族を解放し、国家として統一した偉業を私達は卒直に認め、学ぶべきであることを特に強調したいと思います。
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    中国では全国いかなる遠隔地にあっても国の行政は行きとどいております。
    各期の全国人民代表大会にはすべての少数民族の代表を参加させています。
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    全国に民族学院は10校あり、全国の大学や専門学校も少数民族出身の子弟を優先入学させるよう注意がはらわれています。
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     一般的に見て労働者や農民をはじめ、一人一人が自分達は国の主人公であることを非常に誇りとしており、国を富ますことが自分達を富ますことと一致することを明確につかんで日常の労働をしている姿は誰が見ても羨やましく思います。


    ここには,つぎの考えが示されている:
     「 ひとの幸不幸は,制度・政権次第」
    この考えの者は,つぎを簡単に信じてしまう:
     「 中華人民共和国の誕生により,中国人民は幸せになった。」


    事実はどうか。
    並の制度変更・政権交代では,状況は変わらない。
    しかも,「改革」は,たいてい見込み違いで終わる。
    中華人民共和国の誕生のような大きな制度変更・政権交代だと,犠牲者が大量に出る。 ──「中国訪問団」が見ているもの・羨ましく思えるものは,見せられているものである。貧窮や死屍累々は,隠されている。

    こんなふうになってしまうのは,物事は物理だからである。
    この物理は,単純である:
      大きな質量の物に,小さな質量の物が当たる。
      大きな質量の物の変化は,些少である。
      だからといって,強く当たれば,小さな質量の物は壊れる。

    制度・政権は,<小さな質量の物>である。
    対する<大きな質量の物>は,商品経済である。