Up 「アイヌとは何か」へ 作成: 2019-02-11
更新: 2019-02-13


    "アイヌ" イデオロギーは,「アイヌ」をつぎの絵にする:
      戸塚美波子 (1971)
    この広大なる北海道の大地に
    君臨していたアイヌ
    自由に生きていたアイヌ
    魚を取り 熊 鹿を追い
    山菜を採り
    海辺に 川辺に
    山に 彼らは生きていた

    人と人とが 殺し合うこともなく
    大自然に添って 自然のままに
    生きていたアイヌ
    この大地は まさしく
    彼ら アイヌの物であった
    侵略されるまでは───

    ある日 突然
    見知らぬ人間が
    彼らの 目の前に現われた
    人を疑わねアイヌは
    彼ら和人を もてなし
    道先案内人となった


    "アイヌ"イデオロギーは,「アイヌ=北海道先住民族」を立てる。
    「アイヌ利権」も,「アイヌ=北海道先住民族」を立てる。 ──実際,「アイヌ=北海道先住民族」を用いて利権を導き出そうとするのが,「アイヌ利権」である。
    両者の間に,「アイヌ=北海道先住民族」を世間に認めさせようとする者同士として,奇妙な結託が成る。
    「奇妙」というのは,"アイヌ"イデオロギーは人民革命イデオロギーをルーツにする社会主義であり,「アイヌ利権」は商品経済の自由主義に即いていることになるからである。

    この連合の力は強く,学者・マスコミ・行政を制覇するに至っている。
    このうち問題なのは,学者まで制圧されているという点である。


    現前のアイヌ学は,「アイヌとは何か」の部分がすっぽり抜け落ちている。
    アイヌ学は「アイヌとは何か」から起こすことになるものであるから,これがすっぽり抜け落ちるなどあり得ないことのように思えるが,事実である。

    「アイヌとは何か」の思考は,進化学的な思考法を要する。
    「アイヌ学者」は,進化学的な思考法を欠く。
    よって,自分ではそうとは知らず,「アイヌとは何か」を抜け落としてしまうのである。

    アイヌ学のこの弱体が,"アイヌ"イデオロギーや「アイヌ利権」のカモにされる。
    "アイヌ"イデオロギーおよび「アイヌ利権」の御用学を務めるふうになるというわけである。


    かくして,「アイヌとは何か」がいかに重要な論題であるかがわかる。
    これが退くと,"アイヌ"イデオロギー・「アイヌ利権」の虚偽がまかり通るのを遮るものは,何も存在しなくなるからである。


    引用文献
    • 戸塚美波子 (1971) :「詩 血となみだの大地」
      • 『コタンの痕跡』, 旭川人権擁護委員連合会, 1971. pp.95-107.