ひとは,「アイヌ」とは何かをつぎのように教えられる:
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戸塚美波子 (1971)
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この広大なる北海道の大地に
君臨していたアイヌ
自由に生きていたアイヌ
魚を取り 熊 鹿を追い
山菜を採り
海辺に 川辺に
山に 彼らは生きていた
人と人とが 殺し合うこともなく
大自然に添って 自然のままに
生きていたアイヌ
この大地は まさしく
彼ら アイヌの物であった
侵略されるまでは───
ある日 突然
見知らぬ人間が
彼らの 目の前に現われた
人を疑わねアイヌは
彼ら和人を もてなし
道先案内人となった
しかし──
和人は 部落の若い女たちを
かたっばしから連れ去ったうえ
凌辱したのだ──
そして 男たちを
漁場へと連れて行き
休むひまなく
働かせた
若い女たちは
恋人とも 引さ離され
和人の子を身寵ると
腹を蹴られ流産させられた
そして 多くの女たちは
血にまみれて 息絶えた
男たちは
妻 子 恋人とも
遠く離れ
重労働で疲れ果てた体を
病いに胃され
故郷に 送り返された
その道すがら
妻を 子を 恋人の名を
呼びつつ
死出の旅へと発った
‥‥‥
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これは,「アイヌ」の事実の改竄である。
ひとは,これが事実の改竄であることを知らない。
そこで,事実の改竄であることを知らせるテクストをつくろう,となる。
このテクストは,「アイヌ」を知らない者が読者になるテクストであるから,『アイヌ学入門』である。
引用文献
- 戸塚美波子 (1971) :「詩 血となみだの大地」
- 『コタンの痕跡』, 旭川人権擁護委員連合会, 1971. pp.95-107.
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