Up 「アイヌ」の事実が改竄されている 作成: 2019-02-17
更新: 2019-02-17


    ひとは,「アイヌ」とは何かをつぎのように教えられる:
      戸塚美波子 (1971)
    ‥‥‥ この広大なる北海道の大地に
    君臨していたアイヌ
    自由に生きていたアイヌ
    魚を取り 熊 鹿を追い
    山菜を採り
    海辺に 川辺に
    山に 彼らは生きていた

    人と人とが 殺し合うこともなく
    大自然に添って 自然のままに
    生きていたアイヌ
    この大地は まさしく
    彼ら アイヌの物であった
    侵略されるまでは───

    ある日 突然
    見知らぬ人間が
    彼らの 目の前に現われた
    人を疑わねアイヌは
    彼ら和人を もてなし
    道先案内人となった

    しかし──
    和人は 部落の若い女たちを
    かたっばしから連れ去ったうえ
    凌辱したのだ──

    そして 男たちを
    漁場へと連れて行き
    休むひまなく
    働かせた

    若い女たちは
    恋人とも 引さ離され
    和人の子を身寵ると
    腹を蹴られ流産させられた
    そして 多くの女たちは
    血にまみれて 息絶えた

    男たちは
    妻 子 恋人とも
    遠く離れ
    重労働で疲れ果てた体を
    病いに胃され
    故郷に 送り返された
    その道すがら
    妻を 子を 恋人の名を
    呼びつつ
    死出の旅へと発った
     ‥‥‥

    これは,「アイヌ」の事実の改竄である。
    ひとは,これが事実の改竄であることを知らない。
    そこで,事実の改竄であることを知らせるテクストをつくろう,となる。
    このテクストは,「アイヌ」を知らない者が読者になるテクストであるから,『アイヌ学入門』である。


    引用文献
    • 戸塚美波子 (1971) :「詩 血となみだの大地」
      • 『コタンの痕跡』, 旭川人権擁護委員連合会, 1971. pp.95-107.