Up 埴原和郎, 1927-2004 作成: 2019-11-21
更新: 2019-11-23


  • 著作
    • 埴原和郎 (1972) : 埴原和郎・他『 シンポジウムアイヌ──その起源と文化形成』, 北海道大学図書刊行会, 1972.
    • 埴原和郎 (1993) : 梅原猛・埴原和郎『 アイヌは原日本人か』(小学館ライブラリー44), 小学館, 1993.

  • 参考Webサイト・参考文献

      埴原和郎 (1993), pp.127,128.
     しかし、昭和二十年前後から、アイヌ白人説がだんだん有力になってきました。 その一つの理由としては、北海道大学解剖学教室で、古くから精力的にアイヌの研究を続けてこられた、児玉作左衛門教授が、どうもアイヌは白人に似ていると、いろいろ理由をあげて主張された。 それをきっかけにしてアイヌ白人説というのが広く世界的に流布されてきたわけです。
     私が人類学教室の大学院をでて、札幌医科大学に就職したのが昭和三十一年でした。 もともと人類学を専攻するものとしてアイヌに関心はもっていましたが、やはり北海道へ行ってみると、自分の仕事としてアイヌに取り組まざるをえないという気持ちをその当時から強くもっていました。 直接研究を始めたのはもっとあとの話ですが、いろいろと文献を調べているうちに、どうもアイヌ白人説というのは、おかしいのではないかという気持ちがだんだん強くなってきた。
    児玉先生が、アイヌ白人説の根拠とされたいろいろな証拠、たとえばアイヌは非常に毛が多い。 とくに体毛や、ひげが多い。
    それから目鼻立ちが非常にはっきりしている、つまり凹凸に富んだ立体的な顔をしている。
    それからアイヌには眼の青い人がいるとか‥‥‥:。
    しかしはたしてそうだろうか。
    いろいろ写真を見たりしているとどうも体毛が多いといっても、白人の体毛とは違うのではないか、毛そのものも白人に比べてアイヌのそれは非常に堅い。
    それからアイヌの男の人たちは、背中に毛が多い。 ところが白人は、胸には毛が多いが背中にはそれほど多くはない。
    あるいは顔立ちが立体的であるといっても、アイヌ系の人たちはわりに頬骨が広いという白人と違った特徴をもっている。
    つまり白人に似ているところもあるけれども、遺伝子が違うのではないかと考えるようになりました。