Up 「ブッダ」から反照される現代 作成: 2021-10-18
更新: 2021-10-18


    「ブッダ」とは,「出家」という生き方のことである。
    出家した者の生きる術は,乞食(こつじき)であり,ひとから施しをもらうことである。

    今日,乞食は怪しまれ忌避されるものである。
    ひとの戸口に立って乞食をするときは,恐れられて警察に通報されることを覚悟せねばならない。
    ブッダの出家は,バラモンを頂点とするカースト制度がバックにあってこそなのである。

      Saṃyutta-nikāya, Sagātha vagga, 1.1.10
    愚かな人々は、未来のことにあくせくし、過去のことを思い出して悲しみ、そのために、(しお)れているのである。


    現代のカーストは,ブッダのいう「愚かな人々」が上に立ち,乞食で生きる者は最下層になる。
    位の呼称は,時代に合ったものに変わっていく。
    現代は,「未来のことにあくせくし、過去のことを思い出して悲しみ、そのために、萎れている」者を,「正しい・善い・優れている」と評価し,そうでない者を「落ちこぼれ・外れ者」と呼んで「間違っている・悪い・劣っている」と評価する。

    現代人は,「世の中をよくしたい」と思う者でなければならない。
    ブッダのようなのは,「自分さえよければ」であって,ダメな奴である。

    なぜ「世の中をよくしたい」と思わねばならないのか。
    それが経済を回すからである。
    現代は,世直しのリーダーになろうと競争する者と,彼らを利用してビジネスしようとする者の2種類になる。
    政治家は利権と結び,医者は医療・薬剤産業と結び,教育者は教育産業と結び,等々──というわけである。

    個人は,この2種類に二股をかけている。
    二股を掛けて,自己分裂している。
    政治家は自家撞着し,医者は自家撞着し,教育者は自家撞着し,等々──というわけである。


    人の<生きる>は,ゲームプレイである。
    そして各種ゲームを包括するゲームが,経済である。
    「体制」とは,ゲームの体系である。
    体制から外れる者はつねにいるが,それはゲームから外れるのである。
    彼らは,2タイプになる。
    ゲームにがんばろうとするが負けてしまう者と,ゲームにがんばろうとできない者である。

    ブッダは後者である。

    教育者がいくらがんばっても,体制から外れる者は一定割合いる。
    生身の人間は自然であるのに対し,体制は人為だからである。
    自然である生物は,必ず多様性を担保する。
    自然は,現体制 (現カースト制度) を永遠のものとは見なさないのである。

    自然は,支配体制弱体化の機会をつねに窺っている。
    隙を見つけては,<解放>の破壊を開始する。

      読売新聞, 2021-10-14
    昨年度 不登校最多19万6127人
    小中学生 コロナ・休校影響
     全国の小中学校で2020年度に不登校だった児童生徒は前年度比 8.2%増の19万6127人で過去最多となったことが13目、文部科学省の問題行動.不登校調査でわかった。 新型コロナウイルスの「感染回避」のため、長期間にわたり登校しなかった小中高生は3万人を超え、自殺者は415人で最多だった。文科省は「コロナ禍が子供たちの生活に変化を与えた」と分析する。
    自殺最多 415人 小中高
     調査は毎年、国公私立の小中高校と特別支援学校を対象に実施。 「不登校」は病気、経済的理由、感染回避などを除いて年間30日以上登校していない状況を指す。 小学生は6万3350人 (前年度比18.7%増)、中学生は13万2777人 (同3.8%増) で、いずれも8年連続で増加。 前年度から計1万4855人増えた。
     新型コロナの感染拡大を受け、全国の学校では昨年3月から一斉休校が実施された。 多くの学校では同5月まで休校が続き、その後も夏休みの短縮、修学旅行や運動会の中止などで学校生活は一変した。
     また、学校以外で行う多様で適切な学習活動の重要性を認めた「教育機会確保法」が17年に施行され、フリースクールなどでの学習も広く認められるようになった。 こうした面も、不登校の人数を押し上げる要因になったとみられる。
     今回初めて調査項目に加わったのが、感染を避けるため、年30日以上登校しなかった「感染回避」だ。 独自に出席扱いとする自治体もあるが、感染回避は小中高校で計3万287人に上ったことが判明した。
     また、20年度に自殺した小中高生は415人で前年度から98人増えた。 1974年に調査を開始して以来、最多となり、文科省は「家庭で居場所のない子供たちの救いの場になっていた学校がコロナ禍で休校になり、行事も中止や延期になった影響もある」とみている。
     一方、いじめの認知件数は7年ぶりに減少した。 小中高と特別支援学校のいじめの認知件数は51万7163件 (同15.6%減) 、深刻ないじめである「重大事態」も514件 (28.9%減)でともに減った。 コロナ禍で子供同士が物理的な距離を取り、授業や学校行事、部活動が制限され、やりとりが減ったことが影響したとみられる。
     全体の認知件数が減る中、「パソコンや携帯電話などでの中傷や嫌がらせ」(ネットいじめ) は前年度から946件増え、1万8870件で過去最多となった。


    「不登校」は,ネガティブにいえば「不登校」だが,「未来のことにあくせくしない」の一つの形であるには違いない。
    これも一つの「ブッダ」である。



    引用文献
    • 中村元 [訳]『神々との対話 (Saṃyutta-nikāya, Sagātha vagga 1〜3)』, 岩波書店, 1986.