Up 南海トラフ巨大地震が開く自助自活時代 作成: 2025-04-02
更新: 2025-04-02


    内閣府の南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループから,この度,最新の「被害想定」報告書が発表された。

    メディアは「死者30万人」で騒いでいるが,本当の大変はそれからである。


    報告書のなかの「最大クラス地震における被害想定について」の 13頁には,つぎの数値に要約される表が載っている:
        全壊及び焼失棟数:約200万棟
        半壊棟数:約270万棟

    これは,1棟あたり2人として,
        2 x ( 200 + 270 ) = 940 万人
    がホームレスになるということ。

    インフラおよびサプライチェーンの「復旧」は,全半壊地域の外側の話になる。
    全半壊地域は,長期間,手がつけられないところとして,放置される。
    そして,人もそこを棄てて去ることになるので,「復興」の緊急性がますます無くなる。


    「復興」は,その方向に進むにしても,ひじょうに緩慢なものになる。
    「復興」を担うような企業・機関は,もともと地の便がよいところにあって,そしてそこは被害が大きくなる地域だからである。
    「復興」は,悪条件の上に,「復興」の力がそもそも大きく削がれたところから始まるのである。
    そして,大量のホームレスのその日暮らしを支えることことで,目一杯になる。

    南海トラフ地震災害は,これに遭って弱っている者 対 これに遭わなくて元気な者,の二分になるのではない。
    たくさんの企業が倒産し,たくさんの者が職を失う。
    経済が負のスパイラルに入り,全体が落ち込んでいく。

    この中では,心機一転の気持と自活の力を持てる者が,時代を生きていける。
    そうでない者は,置いていかれる。
    「手当て」を言い出したら,とんでもなく多くの者がその対象になるからである。


    南海トラフ地震災害の要点は,「救済」「復興」がただのお題目になるということである。
    こうなる理由は,つぎの2つ:
    • ここしばらくの各地の震災と比べて,被災人口の多さが比べものにならない
    • 過去の南海トラフ地震の時と比べて,ひとの持ち物の多さが比べものにならない。

    現代人は,持ち物が多い。
    持ち物を失うと,もう生きていけない。
    このような者が,来る南海トラフ地震では,1千万人近く発生するわけである。


    そしてこれに加え,首都直下地震も予定されている。
    東京の中央部は,インフラを地下に収納している。
    津波はそこに流れ込む。
    東京は,中央部が丸ごと機能しなくなる。

    そこに拠点を置いた企業は多くが倒産し,その企業に勤めていた者は失業する。
    首都直下地震では,ホームレスと失業者 (とその家族) が,百万人単位のスケールで発生することになる。


    こうして日本は,一度どん底を見ることになる。
    この流れは,「防災」できない。
    「防災」キャンペーンは,「命があれば未来がある」を唱えている。
    実際,ひとはこれを地で生きることになるのである。


    これは,ひとに恐い思いをしてもらおう,という話ではない。
    心機一転の気持と自活の力が大事になる時代がもう少しで来るよ,という話である。
    「一度どん底を見る」のことばを使ったのは,社会保障と同調が正義の時代には,心機一転の気持と自活の力が大事になる状況は「どん底」に他ならないからである。